医師の働き方

医師過剰時代に備えよ

勤務医をしていると、人手不足の診療科にとっては、「医師の数が常に足りない」という声が聞こえてきます。特定の地区、診療科においては、そうだと思うのですが、国全体を眺めると別の風景が見えてきます。

過去30年以上にわたり医師の数は常に増加している

厚生労働省が2016年に公表した医師および歯科医師数の推移を見てみましょう。

まず歯科医師数の推移について
歯科医師の絶対数、人口10万人あたりの歯科医師数が漸増していることがわかります。

次に医師数の推移について
医師の絶対数、人口10万人あたりの医師数ともにかなりのスピードで増加しています。注目すべきは、過去30年以上一貫して増加し続けている点です

実際に、大都市の特定の診療科によっては、すでに、医師が余り始めていることを実感されている方も多いのではないでしょうか?

人口減少が医療に与えるインパクト

将来を正確に予想することは不可能に近いのですが、唯一正確に予想できるのが、人口動態です。移民の受け入れを解禁するといった政治的な改革がなされなければ、将来の人口はほぼ正確に予想できます。

内閣府の人口動態に関する資料

我が国の総人口は、今後、長期の人口減少過程に入り、2026年に人口1億2,000万人を下回った後も減少を続け、2048年には1億人を割って9,913万人となり、2060年には8,674万人になると推計されている。

40年後には、現在の北海道、東北地方、中国地方、九州地区に住む人口(約3,700万人)に匹敵する人口が日本からいなくなります。医師数の緩やかな増加よりも、むしろ人口減少の方が医師の働き方に与える影響は大きくなるでしょう。

医学部の定員割れはありえない

人口減少、働き手の不足というのは、日本全体の大きな解決すべき問題となりますが、医師についてはあてはまりません。現在の医学部受験競争の激化をみればわかるとおり、医学部医学科の定員割れは、今後生じる可能性は非常に少ないと言えます。

受給バランスで、医師の数が調整されることはない

ここが一番の大きな問題点です。今後人口が大きく減少することがわかっていたとしても、今のままいけば、医師の数は増え続けます。医学部医学科の定員は、国が管理しているため、市場原理とは無関係です。そのため、医師の数が、人口に対して相対的に過剰になったとしても、その流れを止めることは誰にもできません。歯科医師、弁護士の現在の状況と似たような状況になることはほぼ確実な未来と言えるでしょう。

まとめ

医師の数は、過去30年にわたって、増加し続けています。そこに、人口の大きな減少というインパクトが加わり、医師の働き方は今後大きな転換期を迎えるでしょう。医師の数の調整には、市場原理が働かず、今後受給バランスが崩れると、生き残りが大変になる時代がやってくる可能性があります。