国内学会

教科書のようにわかりやすい!初心者のための国内学会参加の方法

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どの学会にエントリーするかを決める

はじめての国内学会や研究会の発表であれば、先輩医師から、「今度○○の学会があるんだけど、演題だしてみる?」という感じで提案されることが多いと思います。若手医師にとって、学会に参加する機会はとても貴重ですから、そのようなチャンスがあれば、ぜひ発表してみましょう。

自分で学会を探す方法

少し慣れてくると、自分で学会を探す機会もあるでしょう。とはいっても、参加したことのない学会をインターネットの情報だけで探すのは、上級者向きです。この場合も、先輩医師に「○○という領域で、一番規模の大きな学会は何でしょうか?」とか「○○という領域で、比較的演題がとおりやすい学会があったら教えてもらえませんか?」と質問してみましょう。演題採択率が、10〜20%程度の学会もあれば、エントリーされた演題が、ほぼ100%採択される学会もあります。採択率については、先輩医師に聞いてみるのが良いでしょう。いくつか学会を教えてもらったら、その学会の次回開催時期、開催場所をインターネットで調べてみましょう。演題募集期間も重要ですから、調べたついでにカレンダーに記録しておきます。ただし、上司の許可なく、勝手に学会にエントリーするのは、印象がかなり悪くなりますから、控えましょう。演題登録してみたい学会がみつかったら、上司と相談して、許可をとるようにしましょう。

学会日時と開催場所、演題募集期間をカレンダーにメモ

学会日時、開催場所を調べたついでに、演題募集期間をメモしておきます。学会に演題を出さずに、参加するだけにすることも可能ですが、発表なしで、病院を留守にするというのは、ベテラン医師にとってもハードルが高い行為ですし、そもそも出張の許可がでない可能性もあります。発表なしで、学会に参加するときは、上司に確認をとるようにしましょう。ちなみに、1つの学会に複数の演題を登録することも可能です。

演題募集期間の締切までにすべきこと

最初にすることは、前回の学会の抄録集を手に入れること

ここが一番重要です。学会にエントリーするためには、演題を登録するために抄録を作成する必要があります。もちろん、学会のホームページを確認すれば、投稿規定が細かく記されており、一通り目を通す必要があります。しかし、投稿規定だけをみて、抄録を書き始めるのは効率がよくありません。それよりは、先輩医師に「前回の○○学会の抄録を参考にしたいので、抄録集を貸していただけませんか?」と聞いてみるのがスマートな対応でしょう。そこで、自分と同じような研究テーマの抄録を確認して、似たような書き方をしてみましょう。いきなり自分のオリジナル文章で書くより効果的です。

発表のカテゴリーについて確認する

学会には、一般演題と指定演題(学会サイドが演者を指定するタイプの演題)がありますが、学会初心者の先生が登録するのは、ほぼ一般演題だと思います。ちなみに、指定演題には、パネルディスカッション、シンポジウムといったカテゴリーがあります。

一般演題には、口演発表と、ポスター発表の2種類がある

口演発表かポスター発表か、どちらかを指定して、エントリーできるタイプの学会もありますし、口演にエントリーしたものの、主催者側の都合で、ポスターに振り分けられることもあります。

口演発表は、聴衆の前で、プロジェクターから投影されたスライドを使いながら、マイクで話すスタイルになります。発表時間はおおむね短いもので3分、一般的には5〜7分程度であることがほとんどです。発表の後に、1〜3分程度の質疑応答時間が設けられることがほとんどです。質疑応答については、演者が発表した後に、そのまま質疑応答を行う場合と、5〜6人が発表したら、最後に、一括して質疑応答を行うスタイルがあります。前者がより一般的です。

ポスター発表については、2つの方法があります。1つは、紙のポスターをボードに貼り付けておおき、それを使って発表するスタイル。もう一つは、紙のポスターは不要で、提出したデータを、ポスター会場に設置されたパソコンのモニターで参加者が好きな時間にチェックするスタイル(eポスターと呼ばれます)があります。国内学会の場合、ほとんどが前者です。ポスター発表(紙のポスター、eポスター)の場合は、指定された時刻にポスターの前で発表するスタイル形式もありますし、発表がない場合もあります。発表の有無は、学会ホームページで確認しておきましょう。

抄録に記載する所属について

所属(病院名)の書き方については、先輩医師に確認しましょう。

Dept. of neurosurgery 脳神経外科(Department of の略)

英語のタイトルが必要な場合のコツ

学会によっては、英語のタイトルが必要なことがあります。いきなり英語のタイトルを考えるのも無理がありますから、ネイティブが書いた英語の論文をいくつか眺めてみて、似たようなタイトルを作ってみましょう。

e-mailを登録する際の注意事項(重要)

抄録を登録する際は、必ずe-mailを登録する場所があります。採択通知などの重要な情報が届きますから、必ず自分が毎日確認するe-mailを登録しておきましょう。病院から与えられたe-mailアドレスを使用しても良いのですが、若い頃は頻繁に転勤があります。転勤すると、当然病院から与えられたメルアドは使えなくなります。オススメは、自分専用のgmailアカウントを取得することです。ここで、注意事項があります。学生時代から使っているメールアドレス、例えば0000happyman@gmail.comみたいな、学生のノリがむき出しのアドレスを、医師になっても使い続けている人を見かけます。これは、全くオススメできません。医師になったら、40歳、50歳の人がみても、恥ずかしくないメールアカウントを作成しておきましょう。間違っても、キャリア携帯のメルアド(ドコモ、au、ソフトバンク)を登録に使ってはいけません。

私は、gmailのアカウントを10年以上使いつづけています。e-mailアドレスは、学会エントリー以外に、英語論文や日本語論文に記載する機会が増えてきます。そこに、あまりふざけたメールアドレスを書くのは、社会人として良識に欠けると判断されます。どのようなメルアドが良いか迷ったら、実際の英語論文に記載されているメルアドをいくつかチェックしてみるのをオススメします。

学会エントリーの際、学会正会員でないと演題登録ができないこともある

学会によっては、「参加者の資格として、学会正会員であること」という条件が記されている場合があります。この場合、原則として演題を登録する前に、学会正会員になるための手続きを完了しておく必要があります。(実際には、学会エントリーをした後で、正会員になる手続きをしても大丈夫なこともあります)

演題締切の2〜4週間前には、一度指導医に抄録のチェックを受けておく(重要)

学会初心者がやりがちなミスとして、演題締切の3日前に抄録を指導医に見せに行ったら、「これ、全然ダメ。全部作り直し!!」と言われるパターンです。自分では、完璧だろうと思って作成した抄録であっても、指導医のチェックを1回で突破するのは、至難の技です。必ず、2〜3度修正が入ると覚悟して、できるだけ締切より余裕をもって相談するようにしましょう。100%の抄録が完成するまえに、6〜7割完成した時点で、「不安なので、少し内容を確認してもらえませんか?」と早めに相談してもらった方が、好印象だと思います。

学会当日までにしておくこと

演題の採択通知を見逃さない

学会の採択通知は、e-mailで届くことがほとんどです。このメールを見落とすと、大変なことになりますから、1日に1回は届いたメールを確認する習慣を身に着けておきましょう。

スライド作りのコツは、先輩医師からテンプレートをもらうこと

学会のスライドを、いきなり自分で作り始めるのは、学会発表に十分に慣れてからにしましょう。口演スライドもポスターも、原則としては、パソコンのパワーポイントで作成することがほとんどです。いきなり、自分のテイストでスライドを作ると、あとで先輩医師に見せた時に、「このスライドの背景、見にくいから変えて」「フォントが最悪」と指摘されることがほとんどです。背景の色が変わると、文字の色も変えなければなりませんし、フォントも発表に適したものと、そうでないものがあります。そうであるなら、最初から、先輩のスライドデータ(テンプレート)をもらい、同じ背景、同じフォントで作成するほうが圧倒的に効率的です。「○○先輩のスライドみせてもらえませんか?」「このスライドめちゃくちゃセンスいいですね。僕も真似したいので、スライドのデータをいただけませんか?」とお願いすれば、先輩医師も喜んでデータをくれると思いますよ。

ホテルを早めに予約する

大都市であればホテルの数が多いので直前のホテル予約でも大丈夫ですが、地方都市で学会が開催される場合は、早めにホテルを予約しておくほうが良いでしょう。地方都市の場合、学会会場の近隣のホテルが全て埋まってしまい、となりの都市から電車で学会会場に移動しなければならなくなる可能性があります。

インターネットで自分で予約(じゃらんなどを利用)してももちろん良いですし、大規模の学会であれば、主催学会の事務局が主要ホテルを押さえていることもあります。その場合は、学会ホームページから予約することも可能です。前もってホテルを押えておくことが重要ですが、かりにホテルを予約し忘れていた場合であっても、学会開催直前にキャンセルがでることも結構あります。個人でホテルを予約するケースが多いとは思いますが、時に「学会の往復は、同じ飛行機(新幹線)で。滞在するホテルも、同じホテルを使用する」という医師たちもいます。その場合は、先輩医師たちの動向にも注意を払う必要があるでしょう。

病院の事務に確認しておくこと

学会に参加するときには、交通費、宿泊費、学会参加費、ポスター作成費用などが病院から支給されるケースがあります。事前に病院の事務、医局秘書さんなどにルールを確認しておきましょう。一般に、交通費支給のためには、飛行機や新幹線の領収書や学会参加証を病院に提出する必要があります。これらの領収書を捨ててしまわないように注意しましょう。また、事前に学会出張の申請を病院にすることが義務付けられていることもあり、その当たりのルールも確認しておきましょう。

研修医は学会に割引料金で参加できることが多い

研修医は学会参加費がディスカウントされることが結構あります。その場合、研修医であることの証明書を提出する必要があることも多いので、学会ホームページをチェックしておきましょう。

口演発表、eポスターなどで、デジタルデータを事前に登録が必要なケースがある

デジタルデータを、USBで発表当日に持参するケースがほとんどですが、時々、事前に学会ホームページ経由でデータをアップロードしておくように指示があることがあります。データを持参するのか、事前にネット経由でアップロードが必要なのかは、学会ホームページで確認しておきましょう。

ポスターを印刷する方法

大学病院などであれば、病院にポスターをプリントできる大型のプリンターを設置してあるケースがあります。しかし、一般的には、デジタルデータをポスター印刷を請け負っているネット上のサイトに送って、プリントしてもらうのが一般的だと思います。もちろん、勤務先の近くに、データを持参したら、プリントしてくれる業者があれば、そこでプリントしても構いません。全国規模の学会であれば、学会ホームページに、「事前にデータを入稿しておけば、業者がプリントして、学会会場に貼り付け、撤去までしてくれる」というサービスを提供してくれていることもあります(もちろん有料でだいたい1万円程度)。この費用も病院が負担してくれることもあるので、医局秘書さんに確認してみましょう。

学会の予行

学会の予行についても、ぎりぎりに指導医にみせると、直前に大幅な修正が加わると大変なことになりますから、余裕をもって行うようにしましょう。学会発表の際、口演、ポスター発表において、非常に重要な約束事として、絶対に発表制限時間をオーバーしてはいけないということ。もし、自分の発表時間が5分のところ、7分発表してしまったとします。その2分オーバーは司会進行の際、どこかで調整しなくてはいけない。大抵は、最後の発表者のところで、「時間がなくなったので、質疑応答は省略します」となってしまいます。つまり、自分の発表時間オーバーが、他の演者の発表に大きく悪影響を及ぼしてしまうわけです。学会によっては、発表時間が終了した時点で、会場の明かりがつき、発表を打ち切られてしまうこともあります。学会予行の前には、必ず1回は、発表原稿を最初から最後まで本番のつもりで読んでみて、時間を測ってみましょう。学会当日に読み原稿を忘れないように持参しましょう。

利益相反 (conflict of interest:COI)について

医学研究をして、発表する際、例えば、その研究に企業(スポンサー)から助成金をもらっている場合は、「発表の内容に、スポンサー企業の意向が反映されているのではないか?」というような心配が生じます。自分の発表内容に対して、影響を与えうる、報酬、助成金などについては、学会発表の際に開示する義務があります。それを利益相反(COI)と呼びます。近年では、主要な学会においては、口演スライドやポスターにCOIの有無を記載することが義務付けられています。これは、学会HPに書かれている内容を確認しましょう。学会が、COI開示用のスライドの雛形をを用意してくれているケースもあります。

学会の当日

服装は原則スーツとネクタイ、革靴を着用する

学会発表というのは、病院を代表して、参加することになります。特に、自分が発表するのであれば、服装はスーツ、ネクタイ、革靴着用が原則となります。例外として、真夏に開催される学会、沖縄で開催される学会などでは、「本学会のドレスコードは、半袖、ノーネクタイです」といった感じで、学会ホームページで事前にアナウンスがなされることもあります。この場合は、そのドレスコードに従って大丈夫です。

学会に持っていくと良いもの

病院から支給された名刺があれば、持参すると良いです。全員懇親会で他の施設の先生と知り合いになった際、名刺交換しておくと良いでしょう。もし、非常に面白い先生や今度施設見学に伺う際のキーパーソンとなりえる人物と名刺交換ができたら、その日のうちにメールで連絡をいれておきましょう。初対面の人とのメール交換は、会ったその日、もしくは翌朝がベストのタイミングです。逆に、会ってから数日経ってしまうと、メールを出すタイミングを逃してしまうことになります。

スライドのデータは、USBで持参することが多いと思いますが、ノートパソコンを持っているなら、それも持参しておくのが良いと思います。そうすれば、比較的直前までスライドの修正ができますし、仮にUSBを家に忘れてしまったとしても、リカバリーが可能になります。

スライドの原稿を忘れないように。発表中は、部屋が暗転して、手元のライトしか灯りがありません。そのため、原稿のフォントは少し大きめにして、読みやすいサイズにしておきましょう。

学会受付ですること

学会参加費を支払い、学会参加証をもらう。学会参加費は、学会に参加したことを証明するものであり、領収書を兼ねています。病院から旅費が支給される場合、この証明書を後日病院に提出する必要がありますので、捨てないように注意しましょう。研修医証明書を持参した場合は、ここで提出します。

演題の登録は時間に余裕をもって

学会会場についたら、まず最初に、自分の口演スライドを、所定の場所で、登録するようにします。スライドを登録する場所は、学会会場の地図に書いてあります。わからなければ、学会スタッフに確認しましょう。たいていの学会では、USBにデータをいれて、持参する形式です。データをスライドのエントリーブースに提出する際、スライドチェックができます。フォントのズレが生じていないか、確認しておきましょう。フォントがずれていたら、その場で修正も可能です。当然ですが、スライド登録の場で、時間をかけた修正をすると、周囲に迷惑がかかりますから、それは控えましょう。

ポスター貼る時間と撤去の時間を確認

自分で、持参したポスターを貼る場合は、学会が指定している、貼る時間と撤去の時間を確認しておきましょう。

発表直前の準備

自分の発表までに、一度は原稿を読んでおきましょう。実際の発表で、よくあるミスとして、自分の原稿を読むのに夢中になって、自分が読んでいる原稿と、スライドがずれてしまうミスです。原稿があれば、それを読むだけですから、あまり緊張せずに、ゆっくりと落ち着いて発表するよう心がけましょう。

質疑応答について

口演であれ、ポスター発表であれ、自分の発表が終わったら、質疑応答の時間が設けられます。フロアーから少し厳し目の質問がきたとしても、相手の意見を完全に否定するような発言は慎むべきでしょう。というのも、質疑応答というのは、どちらが正しいか、間違っているかを勝負する場ではなく、意見を交換することで、より良い医療についてみんなで話し合う場です。

発表が終わったら、学会懇親会に参加してみよう

大きな学会であれば、学会初日の夕方に、懇親会の場が設けられることが多いと思います。そこでは、食事、飲み物(お酒含む)の提供があり、学会長の挨拶や余興があるのが一般的です。若手医師であれば、周囲は知らない先生ばかりだと思いますが、自分の同年代の先生たちと交流する良い機会ですから、ぜひ色々な人達と話をしてみましょう。そこで、名刺交換を求められることが多いので、名刺はお忘れないように。