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若手が生成AIを使ってプレゼンをする際に気をつけるべきこと

自分は、生成AIに関しては、使用を強く推奨!する立場です。日常、仕事でもフル活用しています。

若手かつ優秀な研究者が、「抄読会や学会スライド作成に生成AIを有効活用しよう。時間を大幅に短縮できまよ」というメッセージをときどき見かけます。このような情報発信をしている方というのは、怠け者ではなく、むしろ同世代では優等生と認識されている方が多いのではないでしょうか?

若手×生成AIで効率的なアウトプット(抄読会の資料、プレゼン)

この2つが組み合わさると、相性がよくありません。混ぜるな危険です。

若手のアウトプットをチェックする職場の上司の立場からすると、この優秀なドクターが普段、職場で色々な加点をゲットしていたとしても、生成AIのアウトプットをみんなの前で使った時点で、レッドカード(即退場)です。

「は?!意味わからん。貴重な時間を使って、辞書を使いながら英語論文を翻訳するとかありえない。生成AIの進歩を知らない老害の意見だろ」という心の声が聞こえてきそうですね。

ということでこの状況をメタ視点で解説します。

抄読会や学会発表の予行演習に参加するのは、上司の立場からしても正直面倒なことです。では、面倒なのに、なぜそれを続けているかというと、「部下のスキルを伸ばすため」です。部下の教育、成長が目的なのです。

英語の論文を読む。自分の考えをスライドにして他者の前で発表するということが、その後の医師の人生において重要と考えているから、わざわざ時間を割いてそのような場所を用意しています。少なくとも上司はそう信じています。だから面倒なのにそれを続けているのです。

わかりやすく、軍隊に例えてみましょう。

軍曹が、入隊したての部下に対して、朝礼で「2週間後までに、指定の筋トレ100セットしてこい!理由は聞くな。以上」という理不尽な命令をしたとします。

そして、2週間後に同期は理不尽な命令に従い、筋トレをして全身引き締まった体型になって朝礼に参加しています。そこに、マッスルスーツを着用したA君があらわれます。見た目は全く同じような筋肉がついています。いやむしろ見た目はA君のマッスルが最も立派です。

軍曹は、今後戦場に行くなら、最低限、これくらいの筋肉が必要、そのためには筋トレ100セットは必須という意図で命令しています。しかし、上官の意図を汲み取らず、「筋トレなんて無駄。見た目同じなら問題ないでしょ」という部下が現れたら、上官は理屈抜きで、心の底から「あ。こいつは使えないな」と判断します。これが一発レッドの意味です。

一方で、生成AIをフル活用しても良いシーンがあります。

映画の撮影で、監督から「筋トレを終えたエキストラ100人が必要」と言われたスタッフが、「それならマッスルスーツを着用したエキストラを使用しましょう」と提案するのはありです。

それとは別に、フランケンは、「これをするなら、読む気はないから参加しない」と宣言して、ペナルティを受けたほうが良いとも指摘しています。ここも重要なポイントなので深堀りします。

生成AIが普及した未来、「医者が医学英語を習得していなくても、学会発表、論文作成に困らない時代がくるかもしれない」というのは一つの考え方です。おそらく生成AIを抄読会に有効活用しようと考えてるドクターも似たような考え方をしているかもしれません。この点は全く否定されるべきものでもありません。

ただ、部下を評価する立場の上司は、正しいかどうかは別にして、現時点では医学英語は医師の必須スキルと考えています。もし、上司が医学英語は、今後は必須スキルではないと考えているなら、抄読会の習慣は廃止されているはずです。

部下を評価する立場の上司は必要と考えている。私はそれを必要とは思わない。そのギャップを適正に埋めたいなら、抄読会に参加しないのがベストチョイスです。当然そこでペナルティは受けます。具体的には上司の心証は悪くなるでしょう。でも、それ以外のシーンで加点を積上げることができたら、挽回は可能。例えば、緊急手術には必ずくるみたいな。そうなると「あいつは頑固だから、英語の抄読会だけは一貫して参加しないよな。英語の辞書で両親殴り殺されたのかな?」というポジションを得ます。なんでも食べるのにピーマンだけは食べられない的なやつです。

軍曹の例で言えば、筋トレせずに朝礼に参加する。なぜしなかったと言われたら、「自分は体力に自信がないから、現場にでるのではなく、戦術家になる。そのために専門書を100冊読んできた」みたいなイメージです。

一方で、軋轢をさけるために、生成AIを使って抄読会の資料を作成して、上司の前で堂々と発表するのは、軍曹の前にマッスルスーツを着用して登場するのと同じこと。この部下は、今後戦場で起こる様々なシーンで、上官の命令を無視して、同じことをするだろう。戦場には一緒には行けないと判断されます。

ちなみにフランケンは「抄読会を完全オンラインにしてAIに読ませる。 参加者は接続だけして見ない聞かない。 やった事実だけを残す。 機能評価の証拠作りに。そこまでやるならある意味筋は通る」と記載しています。上司は病院機能評価のために抄読会を継続している可能性もあると。それを否定するなら、病院機能評価をクリアする代案、仕組み化も合わせて提案せよと。うーん。この短文にこれだけのメッセージを盛り込むのは才能の塊ですね。このメッセージを読み取れるかどうかを試されている気すらします。

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