医師は高所得ですが、貯金ができないことに悩んでいる人も多いと思います。今回は、具体的な失敗談から学んでみましょう。
給料日を待ち望む生活
給料が振り込まれたら、とりあえず、10万円ほどATMからお金を引き出します。そして、そのお金を財布に入れて、飲みに出かけます。1ヵ月一生懸命に働いて得たお金ですから、自分が使いたいことに使う、その権利は自分が持っていると考えていました。そして、10万円がなくなったら、もう10万円引き出します。仕事のストレスが多かったこともあり、週に数回飲み会に出かけていました。その中には、研修医の勧誘会など医局員総出の飲み会もたくさんありましたね。ですが、そのような飲み会を続けていると、お金があっというまになくなります。そうすると、次の給料日までお金が足りません。その場を乗り切るために、スポットのアルバイト(主には当直)を入れていました。当時は、当直明けに封筒に入った現金を貰える病院がまだ残っており、そのもらったお金をそのまま財布に入れます。そうして、ちょうどお金を使い果たした頃に、次の給料日がやってきます。
その当時を物語る思考として、自分は給料を稼いで、翌月まで借金せずに生活できたんだから、これで生活は安定していると考えていたことです。もらった給料を全て使い果たして、翌月また給料をもらう。その繰り返しですから、当然貯金が増えることなく何年も経過してしまいました。
しくじり先生が原因を考えてみた
家計簿をつけていない
資産形成はダイエットと似ています。
ダイエット:体重計で体重を管理
資産形成:家計簿で資産を管理
体重計に乗らずに、ダイエットに成功する可能性はほぼゼロです。それと同じように家計簿をつけずに、資産形成に成功する可能性もほぼゼロです。資産を増やすためには、資産を記録することが絶対に必要です。一般的なイメージの家計簿(レシートを集めて記録する)をつける必要はなく、一ヶ月に一度、資産形成に特化した簡単家計簿をつけるところからスタートしてみましょう。
給料の本質は、労働力の再生産に必要なミニマムコスト
勤め人の給料について考えてみましょう。実は、勤め人の給料というのは、能力給ではなく、労働力の再生産に必要なミニマムコストと考えるのが妥当です。毎週飲み歩く生活を続けていた背景には、医師という仕事が非常に精神的にキツイ、ストレスを貯め込む仕事であることがあげられます。忙しい勤務医の生活を続けていると、365日ストレスにさらされているため、それが当たり前と感じてしまいます。ですが、医師ほど強いストレスを感じる仕事というのは、世の中にそれほど多くありません。そのストレスを受けても、また翌日仕事を頑張るためには、ある程度の気晴らしが必要になります。その再生産にかかるコストこそ、給料の本質です。
資本家は、労働者(医師)に対して給料を支払います。
労働者は、労働(時間)という価値を提供し、給料(お金)をもらいます。
ここで、給料の定義をお示しします。
給料 = 労働力の再生産に必要なミニマムコスト
研修医の給料が安いのは、一般に独身&ひとり暮らしであることが多く、生活費が安くて済むから。逆に所帯持ちの年齢になるとそれなりの給料になります。その給料を使って、普通に1ヵ月生活すると、基本的に手元に給料はあまり残りません。うちの診療科は、毎月○億円の売上を出しているのに、○○科の医師と給料が同じなのは、おかしい。そのような意見を聞くことがありますが、給料の定義を知るとその理由がわかります。もしかりに、毎月○億円の売上を出している医師が、開業して、資本(生産設備)を所有しているのであれば、それ相応の収益を得ることができるでしょう。しかし、資本家と労働者は、全く立場が異なります。毎月○億円の売上を出している恩恵を受けるのは、資本家であり、労働者は、あくまで、労働力を再生産するためのミニマムコストを給料として受け取るのみです。
つまり、サラリーマンをしている限り、何も考えずに日々生活していると、もらった給料を全て使い果たし、翌月の給料を受け取る生活が続いてしまうのです。