医師の結婚について

勤務医 ✕ 専業主婦の組み合わせは厳しい戦いになる

従来、勤務医は、医業にフルコミットして、家にも帰らず仕事に没頭する。そのかわりに、好む好まざるにかかわらず、妻が専業主婦になって家を守るというのが、ステレオタイプな医者家族でした。でも、そういったライフスタイルがだんだん厳しくなっているように感じたので、勤務医と専業主婦の組み合わせについて、考察してみたいと思います。


高額所得者✕専業主婦に対して税金の負担がどんどん増えている

結論から申し上げると、高額所得者と専業主婦の組み合わせに対して、税金の負担がどんどん増えています。サラリーマンと専業主婦という組み合わせは、従来は医師に限らず、日本人の家族形態として非常に一般的なものでした。この組み合わせを国も良しとしており、配偶者控除などの税制上有利な仕組みを用意してくれていました。
しかし、2018年1月からは、配偶者控除に世帯主の所得制限が設けられ、一定の所得を超えると、段階的に控除額が減額されることになりました。所得1000万円(年収ベースだと1220万円)を超えると控除額がゼロになります。
そして、日本は個人の所得に対する累進課税が課せられます。世帯に対してでなく、個人の所得に対する累進課税というのがポイントです。例えば、夫の給料が500万円、妻の給料が500万円というパターンと、夫の給料が1000万円、専業主婦の給料が0円というパターンを比較すると、個人に対する累進課税のため、後者の方が、納税額が大きくなり、手取り金額が減少してしまいます。

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医者が家庭をかえりみずに、仕事にフルコミットして稼ぐというのは、税制上はあまり賢い働き方とは言えないというのが現状でしょう。

専業主婦の生存戦略

勤務医の夫と結婚した専業主婦の生存戦略について、妻の立場から考えてみましょう。家族の収入源が、夫に一点集中しており、妻の立場にたってみると最大のリスクは、夫が死ぬことです。「夫が死んだらどうなってしまうのだろうか?」という不安を持つのは当然です。ですから、そこから合理的に導かれる結論は、「マイホームを購入しておくこと」、「夫に高額の生命保険をかけておくこと」です。
マイホームは、生命保険としての性質があります。マイホームの購入資金を銀行から融資してもらう際、多くの場合には「保証料」というものを支払うことになります。保証料については、借入の際に一括で支払う場合と、毎月の返済額に保証料が含まれている場合があります。
この保証料とは「団体信用保険」という保険に加入するために支払うものです。借入している本人が死亡した場合に、ローンの残りがチャラになる理由は、この団体信用保険からローンの残高相当額の保険金がおりるからなのです。
これで、仮に夫が死んだとしても、家賃不要の家は手元に残ります。
そして、次は高額の生命保険です。仮に、30歳で夫が急死したとしても、高額の生命保険に加入しておけば、その後の生活がある程度保証されます。
「夫が死ねばいいのに」と考える専業主婦が多いことは、最近よく話題になります。夫が死んでしまったら、生活が脅かされるのではないかと考える男性が多いと思いますが、上述のような仕組みを作ってしまったとしたら、夫が死んでも案外大丈夫なのかもしれません。
マイホーム購入と高額の生命保険加入は、どちらも経済的な自由からは遠ざかる発想ですが、専業主婦の生存戦略からすると、最も合理的な判断となります。これが原因で、夫の主張(賃貸生活を続けて、生命保険は必要最小限にする)と妻の主張が真っ向から対立することになるのです。


夫婦共働きだと状況が一転する

仮に、医師どおしの夫婦だとします。そうなると、マイホーム購入の合理性がなくなります。医師どおしの夫婦だと、「今後もしかしたら離婚することがあるかもしれないから、賃貸で生活するのも悪くないかもね」とか「今後働く場所が変わることがあるかもしれないから賃貸がいいね」という話になるかもしれません。
そして、仮に夫が死んだとしても、奥さまが医師であれば、生活に困ることはありませんから、生命保険も、必要最小限の額にしておくのが合理的な判断になるでしょう。

医師と結婚するための戦略

話が少し脱線してしまいますが、医師と結婚するための戦略として、経済合理的に考えるのなら、生涯働くことを実践するのが一番な気がします。夫婦共働きで、子育て中は、自分の給料が全て無くなるとしても、家事をできるかぎりアウトソーシングするのが良いでしょう。全く家にかえってこない旦那(医師)を持ちながらも、自分はしっかりと働き、人的資本(働いて稼ぐ力)をキープしておくことが、夫婦円満の秘訣なのかもしれません。
逆に、夫医師の立場で考えてみると、安易に専業主婦の道を奥さまに勧めるのは禁忌肢に近い行動かもしれません。専業主婦という生き方を選択してしまうと、上述のとおり、マイホームを購入して、夫を高額の生命保険に加入させて、最終的には夫の死を心のどこかで期待するような夫婦関係になってしまうかもしれませんから。