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勤務医に重要なオーナーシップを持つという発想

勤務医に重要なオーナーシップを持つという発想

「オーナーシップ」とは、個人と組織、個人と仕事との関係を示す概念で、担当する仕事を“自分自身の課題”と主体的に捉え、強い情熱と責任感を持って取り組む姿勢のこと。与えられた職務やミッションに対する自発性、経営に対する当事者意識などがオーナーシップを形成する要素です。

公的病院、私立病院問わず、時に非常にオーナーシップの無い働き方をしている医師を見かけることがあります。

どうせ同じ給料だからと、外来や入院患者さんの数を極端に制限している医師

他の医師や医療スタッフに対して、非常に横柄な態度で接する医師

患者さんに対して、非常にきつい口調で対応する医師

自分の行動を正当化することばかりに意識が向いている医師

確かに、サラリーマンという働き方を、「クビにならない程度に、仕事量を限界まで減らして、みんなと同じ給料をもらう」とか「(自分の横柄な態度で)病院を受診する患者さんの数が減ろうが、医療スタッフが辞めようが、自分の知ったことではない」と考えてしまう人がいることにも少し理解できます。

しかし、基本的にはそのような働き方は、非常に短絡的な考え方に基づいた働き方であるといえます。長期的にみたら、損しかありません。一定の年齢をすぎると、まわりから煙たがられるようになり、だれも注意してくれる人はいません。そして、そのような噂は、すぐにまわりの病院、医師に伝わってしまいます。病院を転勤したら、リセットされると本人は信じているかもしれませんが、悪い噂というのはいったん広がってしまうと、挽回は難しいと思います。

オーナーシップを持った働き方とは、組織に属していたとしても、自分は個人経営のオーナーという意識を持つこと。

それでは、逆にオーナーシップを持った働き方というのは、どのような働き方なのでしょうか?

自分がそのポジションで働き、給料を得るためには、誰が顧客なのか?と常に気を配る。病院であれば、患者さんが顧客であるのは理解しやすいですが、実は所属する病院の経営者や直属の上司も広義の顧客といえるでしょう。

顧客に対して、自分がどのような貢献ができるのか?と常に考える。全く貢献しないのであれば、そもそも存在意義がありません。

病院という大きな組織の中で働いていたとしても、一人ひとりの医師が個人経営のオーナーとう自覚を持つこと。

「自分は○○が専門だ。だから、なんでこんな雑用をやらないといけないんだ」とか、「自分は専門領域のことを知り尽くしている、そんな基本的なこともしらない他科の医師がなんて偉そうなんだ!」という考え方では、自分だけを中心とした小さな世界に生きていることになります。実際はそうではなく、○○を必要としている人に、自分は○○を提供できる。○○で困っている人がいるなら、自分は○○という貢献ができる、というビジョンを持つことがオーナーシップの本質です。

逆に、顧客の言いなりになることが、オーナーシップではありません。外来を夜中も開けてくれと言われたとしても、そもそも無理な話です。あくまで顧客のニーズや痛みに対して、何か貢献できないか?と主体的に考えることが重要なのです。大きな組織に属していると、毎月仕事に行けば、給料が当たり前のように振り込まれるという安定感を得ることができます。でも、その対価として、顧客に対して、提供できるものがないといけない。自分は組織の中で働く、一人のオーナーであること、そのオーナーに給料を払うということは、どんな役割を求められているのか?と考えを巡らせることは重要なことでしょう。想像力を少し広げてみることが時には大切になる気がします。