医師の長時間労働に規制なし
働き方改革の議論が進んでいますが、今回もやはり、医師の長時間労働は、事実上様々な抜け道を作って、現状維持という落とし所になりそうですね。地方の医療を崩壊させないことが至上命題のようで、そのために医師を半強制的に配置して、長時間働かせるという国の強い意志表示だと感じました。
医師の労働に対して正当な報酬を支払わない
実は、医師の長時間労働とセットにあるのが、医師の労働に対して正当な報酬を支払わないことがあげられます。夜間救急の対応医師に対して、夜勤扱いせずに、寝当直と同じ安い報酬しか支払わず、次の日もあたりまえのようにして働かせる。夜間のオンコール医師に対しても無報酬。そして、近い将来には、在宅で電子カルテ入力ができるようなシステムを構築して、在宅勤務時間も無報酬とするはずです。これは、カルテのログをたどれば、○時〜○時まで勤務したことが明らかですから、報酬の対象となるはずですが、無報酬のまま、なし崩し的に導入する病院が大多数だと思います。そもそも、夜間自宅にいる医師に対して、何回も業務の確認の電話が病棟からあったとしても、報酬が発生している病院は皆無だと思います。これが、在宅電子カルテに置き換わるだけです。
労働時間を意図的に把握せず、何時間働こうが、病院内の暗黙ルールで、残業時間に上限を設けている病院もたくさんあります。
医療とリモートワーク。医師へのフリーアクセスは医師の働き方を悪化させる。
正当な報酬を支払うようになれば長時間労働は是正される
医師の労働に対して、正当な報酬をしはらうようにすれば、長時間労働は是正される方向に動きます。労働単価の高い医師を長時間働かせると、病院としては人件費がかさみます。それよりは、医師より労働単価の安い人の雇用を増やし、医師の労働をサポートする方が合理的です。医師の長時間労働をやめさせるインセンティブが病院側に発生するので、サポートする人を増やせるのです。
医師の定額働かせ放題
しかし、現在の病院では、医師の定額働かせ放題がビジネスモデルとして組み込まれています。医師の使命感・やりがいを、巧妙に利用して、搾取する方法が、目に見えにくい形でどんどん悪質化している気がします。労働に対して正当な報酬を支払わない、医師を事実上タダ働きさせることができるのであれば、サポートスタッフを雇うインセンティブは働きません。医師は死ぬ一歩手前まで、定額働かせ放題プランで利用するのが合理的な経営判断となるでしょう。
医師の定額使い放題問題について
我々勤務医の懐刀とは?
結論から申し上げると、全ての勤務医は、転職という選択肢(懐刀)を常に持っておくべきです。この懐刀は、当然普段使うことはありません。自分が一生懸命に働き、医療に貢献できて、給料が貰える仕事はかけがえのないものであり、それで充実した日々がおくれるのであれば、病院、医師、患者さんの全てがハッピーです。
ですが、そのパワーバランスがいったん崩壊してしまい、医師の負担がどんどん重くなってしまうことは、今後全ての勤務医におこりえます。今は大丈夫でも、次の転勤先がどうなるかは予測できないからです。使わないに越したことはありませんが、いざという時には、自分と家族の身を護るために、「その勤務内容には到底従うことはできません。その条件であれば辞めさせていただきます」という選択肢を持ちづづけるべきでしょう。本来はNOといえない多くの善良な医師を守るための労働基準法が事実上機能していないため、自分と家族を守るための懐刀をもって、自衛するしかないのです。嫌なら辞める、逃げるは恥だが役に立つというのは、今後のサバイバルスキルとして非常に重要になる気がします。