いまだ金時ラジオ

いまだ金時ラジオ 第4回 クリックモーメントをつかめ!

いまだ金時ラジオ第4回 クリックモーメント
主題1 成功はランダムに起きる



主題2 成功への道


主題3 クリックモーメントの捕まえ方


主題4 クリックモーメントとエッセンシャル思考は矛盾した考えなのか?


今回取り上げた本クリックモーメント

成功は“ランダム”にやってくる! チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方/フランス・ヨハンソン/池田紘子【1000円以上送料無料】

今後取り上げる予定の本

主題1 成功はランダムに起きる

キーワードをいきなりあげよう。ランダムを受け入れろ。
これは理解する前に、肯定する。
人間はランダムを認めたがらない。
それがこの本がもたらす、最初の驚き。
どういうことか、解説していこう。

一つは、成功は私たちが考えているよりはるかにランダムに起きるということ。もう一つは、個人や組織がランダムに起きる成功をつかみ、うまく利用するためにできる行動はいろいろあるということだ。この二つの考え方に衝撃を受けるとしたら、それは私たちが常日頃、成功とは戦略を練り、計画を立て、綿密な分析をした結果として得られるものだと刷り込まれているからにほかならない。

成功者は、偶然の出会い、突然のひらめき、予期せぬ結果などを経験している。彼らは運命を変えた瞬間のことを振り返り、「あの瞬間がすべての始まりだった」と言う。誰にでも訪れるこの瞬間を、私は「クリック・モーメント」と名づけた。

たとえそのときは気づかなくても 、新しいものに目を向けさせ 、違う道を選ばせ 、すべてを変える決断を下させる瞬間が 、わずかだが存在することも確かである 。実際のところ 、人生や企業の歴史を巻き戻してみると 、ほかよりはるかに大きな影響を与えた瞬間 、出会い 、出来事 、印象 、洞察があったことは間違いない 。

ルール変更の無い世界での成功法則
例えばテニス、チェスの世界
→圧倒的な練習時間が成功につながる

ルールの無い世界での成功法則
携帯電話のノキアが、数年でアップルに追い抜かれた事例
→ルールがすぐに変わる。成功は完全にランダム

社会規範のきびしさ、ゆるさ。
厳しいほどルールがガチガチで、ランダムなイベントは起こらない。チェスとか。
緩いとランダムな成功が起こりやすくなる。そのかわり一万時間の法則が効きにくい世界。

社会規範が緩い世界での成功は、論理と実力だけで生じるものではない。ランダムな要因が大きく関係する。

「同等確率の原則 」
「成功する確率は 、同じ 。何度も繰り返しサイコロを振るようなものだ 。
たくさん書けば書くほど期待値は高くなる 。」

まとめ
社会規範のゆるい世界で、イベントはランダムに生じる。
クリックモーメントはランダムに起こる。
これを逃さないためには?

主題2 成功への道

ランダムを捕まえろ。
まずは理解しないと。

本書が示す成功への道
成功はランダムに生じる。成功は分析と計画の結果得られるものではない。
ランダム性、偶然、そして運を、行動や戦略に核としてとりこむ。
多くの人は、助けてくれると「わかっている」人と会おうとし、新しいことに挑戦しようとせず、毎日忙しく働き、当たり前の方法でしか技術を使わない。

ランダム性を捉えるためのアプローチは三つある。言い換えると、成功にいたる方法は三つある。

一つめは「クリック・モーメント(偶然のチャンス、すべての歯車がかみ合う瞬間)」。

人間はなぜランダムな成功認めないのか?

人間の脳は、ランダムではなく、秩序を好む。
秩序で理解できる合理的な選択が、人間の生存に有利だったから。
だから、人間は、後付けで成功のメカニズムに合理的な秩序を見つけ出すのが得意。
この理屈に従ったから、あの企業は成功した、と理解しようとする。

同じように、失敗にもそれらしい理屈をつけられる。
そいう風にデザインされている。人間の脳は。

我々はどのようなデータにもそれらしい理由をつけることができる。本能的に。
行動原理のよって立つところ、というのは、理屈さえ納得できればどこでも許容されうる。
理解できない、説明できない正解よりも、説明できる正解を好む。

ビジネスプランを作成する意味とは、チームがある目標に向かい、協調して動けていることを示すために立てれれる、と、
プランそのものは1ヶ月もすれば陳腐化する、と

二つめは、私が「目的ある賭け」と呼んでいるものである。うまくいくかどうかわからなくても、とにかく行動することを指す。
1.何回も賭ける
同等確率の原則があるなら、賭けの回数を増やせば増やすほど 、成功しやすくなる 。
2.小さく賭ける
何回も賭けるために。
アイデアを繰り返すことで、成功に向けた小さなアジャストができる。
3.許容損失 で決める(ROI 投資収益率ではなく)
危険度を認識して賭ける回数を増やせ。

最後は「複雑エネルギー」。予想外、計画外の行動の結果が成功へつながる。
ランダム、とカオスが混同している印象がある。この本の中では、複雑エネルギーについては、漠然ととられられている。

主題3 クリックモーメントの捕まえ方

ランダムを捕まえろ。クリックモーメントの捕まえ方。

クリック・モーメントを得る機会を増やしたいなら、多くの人に会い、多くの感想を得るだけでは十分ではない。それは誰もが毎日やっている。もっと他のなにかが必要なのだ。
クリックモーメントはどんな時に起こるか?
1.異なる概念、アイデア、人が交わる時に起こりやすい。
2.予測不可能である。狙って起こせない、というのが本質である。
3.感情的な動きである。アイデアを次の段階に進めたい、という欲求を生み出す。
論理的な分析をすっ飛ばす感情の動きであることがポイント。
時間を置くと色褪せてしまう。

ときには現在の仕事から離れることが必要。皮肉に聞こえるかもしれないが、予定にない計画外のことをする時間をスケジュールに組み込むことに価値がある。

クリック・モーメントを起こしたければ 、多様性のあるチーム作りがもっとも効果的だ 。文化 、性別 、民族 、分野 、年齢 、組織内での階級など、チームにはできる限り多くの特徴を持たせるべきである

2.交差的に考える
自分とは異なる分野 、産業 、文化にインスピレーションを求めることによって 、クリック・モーメントを起こす機会を得られる 。

3.接点の多い環境を作る
普段接する理由のない人間を接触させるシステムを作る。

複雑エネルギーは、予期せぬ結果である。これは、個人または組織が何らかの結果を期待して行動したとき、予想とはまったく異なる結果(ときには正反対の結果)が出ることを指す。予期せぬ結果はむしろ絶好の機会(これは、Antifragileにかかれていたことにも通じる。損失の限定されたチャレンジをして、逆向きのブラックスワンが生じると青天井の成功につながる現象)。

このくだりはエッセンシャル思考に続く考察へ。
「成功はランダムに生じる。そうであるなら、最初にすべきはたくさん行動すること(そのために、スケジュールには常に余白を作るようにしておく)。その中で、クリック・モーメントを見つけることが成功の入り口。成功のしっぽを掴んだら、目的ある賭けをしかけよう。
そして、運良くクリックモーメント(成功のしっぽ)を掴んだら、倍賭けすべきである。複雑エネルギーが引っかかるフックを作っておき、プロジェクトのどれかがそれに引っかかったことを確認して、成功を目指すほうがよい。」

主題4 クリックモーメントとエッセンシャル思考は矛盾した考えなのか?

たくさん行動することは、エッセンシャル思考に反するのか?
・エッセンシャル思考で取り除くべきは、他人から与えられる作業。他人が自分のスケジュールを埋め尽くしてしまうことは避けないければならない。そうして、自分が主体的に行動する時間が増えたら、どんどん冒険をしてみたほうが良い(自分のまわりに、100、1000という釣り針を垂らしておく)。主体的に行動しているうちに、何か成功のきっかけを感じたら、目的にある賭けをしかける。ひっかかったら、そのチャンスに倍賭けする。

クリックモーメントとエッセンシャル思考は反しない。
レイヤーが異なるのだ。
エッセンシャル思考とは、うにのように飛び出たトゲを、一本にまとめ大きくする作業。これは個人のレイヤー。
ウニのような状態から、一本の棘になろう。
自分のサイズが棘になったら、周りには同じサイズの棘がいっぱいあることに気がつく。レイヤーが上がって、視野が開ける瞬間だ。
自分を含めて大量の棘がウニを作っている。
この棘同士が、カチッと出会う時にクリックモーメントは訪れる。
もっと大きな棘になれる。その時、自分「達」がさらに大きなウニの中にいることに気がつくだろう。
レイヤーが上昇するたび、自分「達」という一人称は大きくなる。一番小さなウニの自分を完全に保持しつつ、大きな一人称の主体となっていく。

エッセンシャル思考はリソースの統合であり、クリックモーメントはリソースの増加である。出会って、束ねて、伸ばして、出会って、束ねて。

フラクタルだ。マンデルブロ曲線が森を作ってゆく。

なぜ、ランダムモーメントではなく、クリックモーメントなのか?
筆者は、ランダムを「捉える」、という主観的な信念を持っていて、待ち望んだチャンスが来た時に、カチッとハマるタイミングを「見出す」ことに喜びを感じている。だから、クリックモーメントは感情的な体験であり、情熱をモチベーションにせよ、と、前のめりなメッセージを打ち出している。

だから本書の論理は、図らずも「成功へのロジックは構築しうる」なのだ。
そしてこのメッセージは構造的なパラドックスを孕んでいる。このスタンスが成功に結びつくには結局ランダムがキーとなり、ロジックを許さないはずだからだ。

しかし、厭世的に「ランダムに支配されている」ではなく、「理解してコントロールせよ」、というメッセージは矛盾を超えて響く。良書たるゆえんだろう。
ランダムを肯定しろ、から入って、ランダムと戦え、で抜ける。
実にロックだ。

本書の中でウイークポイントがあるとすれば、複雑系への発展だったろう。この描写がどうもスッキリ落ちない。
フラクタルからなる複雑系によるクリックモーメントの拡大というのがおそらく筆者の思い描く最終系であったろう。この展開はフラクタルをメインアームにしたパラダイムのなかで見事に文章化されていく。

乱暴に考察すれば、
1.目的ある賭けでクリックモーメントを掴み
2.エッセンシャル思考で倍がけ、先鋭化させ
3.複雑系を利用してレバーアームをおおきくして
4.影響の輪を広げる
5.このフィードバックを錯覚資産ループで拡大する。

という体系にまとめることができる。