今日ご紹介する本は「人生格差はこれで決まる。働き方の損益分岐点」という本です。
Twitterで話題になっていたので購入してみました。私達の給料がどのような仕組みで決められているのか?働いても働いてもお金が貯まらないのはなぜか?今後どのような働き方を目指すべきか?
マルクス資本論をベースに書かれています。
Voicyサウザーラジオをお聞きの方には、ぜひともオススメしたい本です。
給料の決まり方には2種類ある
必要経費方式と利益分け前方式
前者の必要経費方式が一般的。勤務医はこれ。自分が生活するのに必要なお金(経費)を給料としてもらう。重要なことは会社(病院)の利益を分け前としてもらっているわけではない。
後者の利益分け前方式は、外資系金融機関など特殊な環境。自分の稼ぎ出した利益の一部を給料としてもらう。ただし、利益を出せなくなると即解雇。特殊な働き方。
給料の定義
給料の定義が示されます。私達は、労働力という商品を、企業(病院)に提供して、賃金を得ています。
賃金は、「仕事の成果」「頑張って遅くまで働いた」というもので決まるわけではなく、「労働力の再生産にかかる必要経費。すなわち明日も同じ仕事をするために必要な価値の合計」で決められます。家に帰ってお風呂に入って寝ることで体力が回復します。服を着ないと職場にはこれません。子育てにかかるお金も含まれます。
給料が上がってもお金が貯まらない理由は、「労働力再生産にかかる経費」として支給されているため、手元にはお金が残らない構造になっている。医師で言えば、医師になるまでにかかった労力、時間、高額の教科書代、技術の習得・維持にかかるコストも含まれている。ポイントは、社会一般の相場(平均)であること。俺は毎日ステーキを食べないと元気がでないといってもダメ。
途上国の人件費が安いのは、彼らのスキルが低いわけではなく、労働力再生産にかかるコストが安くてすむから。
仕事のできない窓際族のオジサンの給料が高く、若手社員の給料が安いこともこれで説明できる。若手社員は、1人暮らしでOKだから再生産にかかるコストが安い。だから給料も安い。
企業が利潤を出すために一番重要な商品が労働力
企業が利潤を出すために、いちばん重要なのは、新たな価値を付け加えることができるのは労働者のみだということです。
たとえば綿糸(めんし)を製造して販売する企業について綿花の仕入れ値、機械のレンタル料では利潤がでない。でも、4000円の給料で雇っている労働者が、長時間働いてくれて、8000円の価値を生み出してくれたら4000円の利潤が生まれる。倍の量を生産しても、労働者の給料は変わらないから。要するに、企業が利益を得るためには、労働者に「自分の労働力以上の価値」を生み出させなければいけません。つまり、企業の利益のために働いてもらわなければいけないのです。残業代を払わない企業(病院)が利益を上げる仕組みがここにある。企業にとっては、労働者が一日働き終えたあとにヘトヘトになっているのが「好ましい状態」です。個別の企業で程度の差はあれ、これは資本主義経済のなかでは必然の流れなのです。
それでは、どのような働き方を目指すべきか?
労働力再生産にかかるコストを安くすることができる。過度な激務を避ける。
給料の定義が労働力再生産にかかる経費(コスト)というのを思い出してほしい。医師の給料が高い理由は、医師が賢いからでもなく、社会的に意義のある仕事をしているからでもない。労働力再生産にかかるコストが高いからだ。
このコストの中には、医師を作るために必要なコストも含まれている。大学受験にかかるコスト、医学部6年間、研修医2年間といった研修期間のコストも含まれている。だから医師の給料は高い。医師になるためには、今のところ全ての人がこの過程を経由せねばならず、今後変化することがない。医師に与えられた給料の土台。このような土台をうまく利用すべき。
難易度の高い手術に挑戦し続けても良いが、それは、頑張ってジャンプすることで、高い給料を得ようとする発想。習得にかかるお金、時間、労働力が高くつく。技術革新の早い領域だと廃れることも多い。泌尿器科の世界をみてみると、開腹手術、内視鏡手術、ダビンチの手術といった感じで、技術革新が非常に早い。そこでトップを走りつづけるためには、常にジャンプし続ける生活。しかも、成果が給料に反映されないことはすでに述べたとおり。
でも、医師免許が我々医師にとっては、一生稼げる土台になっている。その他にも各診療科で、臨床に必要とされる基本手技、診断技術といった土台を作ることができれば、ジャンプすることなく、安定した給料を得ることが可能になる。
医師の働き方を考えるきっかけになれば良いと思います。