ブラック病院

医師にとってもブラックな職場をなくすことはできない

医師が働く医療の現場というのは、精神的にも肉体的にも非常にストレスのかかることろです。今回は、医師の労働環境、特にブラックな職場について考えてみたいと思います。

病院の収益が少ない場合に経営者が考えること

日本の病院は、国の定めた診療報酬に基づいて決められているため、国の方針に強い影響を受けます。現在社会保障制度は増え続けており、少子高齢化がすすむことで、今後診療報酬は、基本的には削減の方向になるでしょう。

病院の収益が少なく、人件費に充てられるお金が十分にない場合に、経営者のとれる対策は3つあります。

労働者には、同じ給料でできるだけ長時間働いてもらいたい

できるだけ少ない人数で同じ内容の仕事をしてもらいたい

同じ勤務内容ならできるだけ安く働いてもらいたい

上記の対応策の中で、最後の選択肢である、「医師の給料を下げる」というのは、簡単ではありません。たとえ病院経営が赤字であったとしても、「来年から医師の給料を20%下げる」とう選択はなかなかとりにくい。

当直明けに帰宅することができない、オンコール無報酬と主治医制(ワンオペ)をやめられないといった問題は、いずれも経営改善の視点からすれば、「同一の給料で長時間労働させることで経営を黒字化する方法」を採用しているのです。時間外手当に上限を設けて、それ以上の勤務をサービス残業にするというのも、基本的には同一の給料で長時間働かせる方法です。この方法の大きな問題点は、生産性がどんどん低くなり、勤務医は疲労するわりに、効率はどんどん悪化してしまう点です。

経営者の仕事は、事業を黒字化すること

ニコニコしながら、「労働者を守るのが経営者の仕事。働きやすい職場をつくるために皆で頑張ろう」と労働者を鼓舞しつつも、上述のようにして人件費を抑え、経営を黒字化させることが経営者の仕事です。

労働者はもっと働きやすい環境を求める(給料を上げる,労働時間を少なくする)

経営者はもっと頑張って働けと鼓舞する(給料を下げる,労働時間を多くする)

上記のようなパワーバランスの結果、労働時間や報酬が、落ち着くべきところに落ち着きます。このパワーバランスが、経営者側に極端に強く傾いた状況がブラックな職場です。

ブラックな労働環境の責任は全て経営者にあると単純に言えるものではない

ブラックな労働環境の責任を経営者に押し付けるのも少し酷な話です。病院経営の場合、診療報酬は国が定めているため、「患者さんがたくさん受診する病院が黒字化する」といった単純な構造ではありません。

例えば、行列が絶えないラーメン屋であれば、ラーメンを1杯500円から700円に値上げしよう。となりますが、医療の場合、国から「ラーメンは来年から全国共通450円で販売すること!」と一方的に決められてしまいます。日本は、少子高齢化社会に突入しており、医療費抑制圧力は今後ますます強くなるでしょう。

まとめ

病院の収益は、国にコントロールされている以上、少子高齢化のため、今後国は病院に十分な診療報酬を与えることができなくなる可能性が高いといえます。病院の経営者は、これまで以上に労働者には効率的に働いてもらわなければならない。つまり、そこから導かれる結論は、「今後、ブラックな病院は確実に増加する」ということです。医師の働き方に与える影響も大きくなることは間違いないでしょう。

医師過剰時代に備えよ

資本家と労働者の立場から、医師とお金の関係を考える