合同会社

医師が知っておくべき合同会社の基礎知識

※2018年12月22日に公開した記事ですが、一部の記事を削除(取り消し線を表示)して2019年1月07日に再度公開しました。
主な仕事として勤務医続けながら、小規模企業共済を利用することは、正攻法ではないため、本ブログでは推奨しない立場をとることといたしました。小規模企業共済加入資格については、小規模企業共済の、公式HPをご参照ください。

合同会社とは?

合同会社とは、2006年の会社法の改正により誕生した比較的新しいカテゴリーの会社です。個人事業主や比較的小規模な事業を法人化する際の、新たな選択肢として設立する人が増えています。

株式会社と合同会社の共通点

株式会社と合同会社は、いずれも法人税の課税対象ですが、同じ規模の収入をあげたのであれば、個人事業主よりも節税対策の幅が広がります。社員1人から設立できて、社員数にも制限がありません。会社が受けた債務に関して、代表者や従業員は会社に出資した以上の責任を負いません(有限責任)。

株式会社と合同会社の相違点

株式会社は、新株を発行して出資を募ることができるので、返済義務のない資金調達が可能です。これに対して合同会社は、株式を発行する形での資金調達ができません。会社資金に不足が生じたなら、社員からさらなる出資を募ったり、新たな社員を迎え入れて出資を受けたり、あるいは金融機関などから融資を受けたりすることによる調達手段が一般的です。
株式会社は、株式を公開できる代わりに、株主として会社と利害関係を持つ人が社外に増えるため、毎年株主総会を開かなければならなかったり、最終的な収支勘定である決算を公開(公告)することが義務付けられています。他にも役員に任期の上限があったり(原則として2年間、株式譲渡制限がある場合は10年間)、株式のインサイダー取引や決算の粉飾が禁じられるなど、会社法や金融商品取引法などによる法規制が多くあります。
一方、合同会社は法律の規制がほとんどなく、社内の基本的規則である「定款」によって、社員同士で話し合いながら納得のいくルールを自由に設計できます。任期の上限もありません。

Apple、Amazonも合同会社

今や、合同会社の形態をとるのはスモールスタートの企業だけではありません。有名企業も合同会社化しています。
・Apple Japan:2011年に合同会社化
・Cisco:2007年に合同会社化
・アマゾンジャパン:2016年に合同会社化
・西友:2009年に合同会社化
外資系の企業の場合は、株式会社のブランドが必要ないため、会社運営のフットワークや節税を重視して合同会社が選ばれることが多いようです。

合同会社は、小規模のスタートアップに最適

合同会社は、迅速な意思決定や利益分配などが自由に行えることから、スタートアップには最適でしょう。社員数が数人の小規模な会社なら、合同会社の恩恵は大きくなります。
合同会社は株式会社と比べると、知名度が低いという欠点があります。そのため、社会的な信頼度という意味では、個人事業主よりは優れているものの株式会社には劣ります。ひょっとすると株式会社でないと取引きしてくれない企業もあるかもしれません。
しかし、BtoCのビジネスなら、顧客は合同会社か株式会社かを気にしていないケースが多く、これらのデメリットはほとんど関係ありません。

合同会社のメリット

・会社設立コスト
株式会社設立にかかるコストは、登録免許税15万円+公証人手数料50,000円+収入印紙40,000円+定款の謄本手数料(約2,000円)の、合計約24万2,000円となります。
一方、合同会社(LLC)の場合は登録免許税60,000円+収入印紙40,000円+定款の謄本手数料(約2,000円)の、合計約10万2,000円と半額以下で設立ができます。設立後も決算公告の義務がないため、株式会社に比べるとランニングコストも低くなります。
・役員の変更・留任時のコスト
株式会社では2年間と決まっている役員の任期が、合同会社では無制限となります。株式会社の場合、役員の任期が切れたときには変更や留任などの手続きが必要です。手続きに対する時間的コストもそうですが、重任登記費として10,000円かかります。合同会社では、このコストを削減できるのです。
・決算公告のコスト
会社は、1年に1回、その年の収益などを税務署に報告する決算の義務があります。株式会社は決算を公告する義務があり、通常は官報に掲載しますが、その場合60,000円程度の費用が必要です。合同会社には公告の義務がないため、こういった費用もかかりません。

合同会社は経営の自由度が高い

株式会社の場合は、必ず出資比率に応じて利益を配分する必要があります。つまり、出資金が多い人が多く利益をもらえ、出資金が少ない人は利益が出ても恩恵が少なくなります。しかし、合同会社(LLC)は、出資比率に関係なく、社員間で自由に利益の配分を行えます。
会社に貢献した人に利益配分をしたいと考える場合、株式会社だと出資額といった制約に縛られてしまいますが、合同会社であれば利益の配分が自由にできますので、貢献度に合わせた利益配分ができます。
また、定款による組織の設計も自由に規定できます。企業の出資者と経営者が一致しているため、株主総会などを経ずに迅速に意思決定ができるフットワークの軽さも、スモールスタートに最適でしょう。


合同会社は株式会社と同じ節税が可能

個人事業主から法人化する場合は、節税や資金面で、株式会社に近いメリットが受けられます。

事業資金にまつわるメリット

・節税
・社債が発行できる。資金調達ができる
・有限責任になる。自身が出資した範囲内で責任を負えば済む

特に節税効果は魅力的です。個人事業主の所得税が累進課税なのに対し、法人税は所得が800万円以下なら22%、800万円以上なら30%と一定税率(資本金が1億円以上の場合は一律30%)となります。また、設立から2年間、消費税納税免除(※)を受けられる点も株式会社と共通しています。
そして、忘れてはならないのが、小規模企業共済を使えるようになるという大きな大きなメリットです。勤務医として得た所得の中から、小規模企業共済の積立を行います。その積立金(上限は年間84万円)は、なんと全額所得控除となります。小規模企業共済を利用しなかった場合、この84万円に対しては、所得税が課せられます。しかし、小規模企業共済を利用すれば、課税されないので、所得税分が、毎年手元に残る計算になり、非常に大きな節税効果が期待できます。

合同会社のデメリット

合同会社にはデメリットもあります。事業や成長戦略によっては、株式会社のほうがフィットする場合もあります。合同会社を設立する場合は、これらのデメリットも把握しておきましょう。
・デメリット1 知名度が低いため信頼性はやや劣る
合同会社は、株式会社ほど知られていないのが実情です。取引先によっては株式会社でないと契約してもらえなかったり、採用の際に人材が集まりにくかったりする可能性もないわけではありません。
・デメリット2 資金調達の方法が限られる
株式会社の場合は株式の増資による資金調達が可能ですが、合同会社の場合はできません。投資家から大規模な資金調達をする予定がある場合は気を付けましょう。
・デメリット3 社員同士が対立する可能性がある
利益配分が自由である反面、社員間でのトラブルも起きやすくなりますし、解決が困難になります。こうした対立が会社の意思決定をストップさせてしまう可能性もあるでしょう。合同会社にする場合は、信頼できるパートナーと設立するようにしましょう。


合同会社設立時に決めること

・商号:会社の名前です。好きな名前をつけましょう。
・事業目的:どのような事業で収益を得るのかを記載します。
・本店所在地:会社の住所を決めておきます。
・資本金の額:基本的には1円から設立できますが、会社としての信用度に関わることを意識して決めましょう。
・社員構成:代表権を持つのは誰かなど、社員の役割を決めます。代表社員1人から設立可能です。
・事業年度:合同会社は個人事業主と異なり、事業年度を自由に決められます。繁忙期を避けて決算日を設定するといいでしょう。

商号について
商号は会社の名前となるものですが、いくつかのルールを守ってつける必要があります。使用できるのは、漢字やひらがな、ローマ字のほか、アラビア数字や一部の符号となります。また、有名企業の名前や銀行など、一部の業種を指し示す商号はつけることができません。

事業目的について
事業目的は、会社の事業内容を示します。複数の事業目的を書くのが一般的で、多い企業になると30個以上の事業目的を書いているケースもあります。事業目的の変更には手続きと費用の負担が必要となります。そのため、将来的な事業も含めておくことをおすすめします。定款に記載されていない事業を行ってはいけないことになっており、これを防止するために「前各号に付帯関連する一切の事業」という文言を入れておくのが一般的とされています。

本店所在地について
本店所在地は、基本的に会社の所在地を書きます。一般的な住所では「1-2-3」のようにハイフンで省略することができますが、定款に記載する場合は「1丁目2番地3号」という正式な形式で書くこととなっている点に注意が必要です。

資本金について
資本金ですが、基本的に最低1円でも会社を設立することが可能です。しかし、資本金は会社が信用できるかどうかの指標や会社の規模を把握するものとして取引先や金融機関に見られることがありますので、なるべく大きい金額とするケースが多いとされています。特に基準はありませんが、最低300万円程度にすることが多いようです。

合同会社設立時に役立つ資料、リンク

整形外科医のブログで販売されている下記のテキストの購入を強くオススメします。合同会社設立の際、定款に記載すべき注意事項などがわかりやすく紹介されています。定款は設立後に変更するのが非常に大変ですから、設立の段階で必要な事項は確認しておくのが良いです。
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webサービス合同会社設立 ひとりでできるもん
web上で合同会社設立までの事務作業をサポートしてくれるありがたいサービスです。
私は、整形外科医のブログの上記テキストを購入し、熟読した後で、ひとりでできるもんというサイトを使って作業をすすめました。このサイトは、合同会社設立までをネット上でサポートしてくれるので、初心者でも比較的かんたんに登記することが可能です。

副業としてスモールビジネスに本気で関わるのであれば

合同会社を使って、節税をするためには、まとまった収益が必要になります。事業収益が無いのであれば、節税のメリットは少なくなります。合同会社を維持するためには、法人住民税が毎年最低でも7万円かかります。それに加えて、税理士さんに対する報酬も必要になります。
しかし、それであっても、小規模企業共済に加入して節税をするメリットは利用できます。今後、副業として本気でスモールビジネスに関わるのであれば、合同会社を1つ設立してみると良いかもしれません。