副業(スモールビジネス)の実例

もしも僕が絵描きなら

僕には絵の才能がまったくないのだけれども、もし自分が絵を描く才能に恵まれていたとしたらどのような働き方を選ぶだろうか。

勤め人プラスαを目指す

いきなり、フリーターになって、イラストを販売することはしないだろう。全く業績のないところから、イラストレーターが仕事になるまでには、最低でも2〜3年かかる。その間、必要最小限で良いから、安定した給料をもらうことは最重要なこと。それがないと創作活動などできるはずもない。自分なら、9時〜5時できっちり仕事が終わり、ちょっと退屈な仕事を選ぶかもしれない。目標は、仕事中に自分の体力、気力、集中力を温存すること。仕事は、お金をもらうためと割り切ると思う。そして、5時になったら即退社だ。

自宅についてからの仕事が自分の資産

勤め人をすることで、自分の生活費は稼げるはずだ。5時以降の時間は、自分が好きなことに使える。インターネット上を探すと、1枚2000円程度でイラストを描く仕事があふれている。でも、1時間以上かけて、1枚2000円のイラストを書いていたのでは、イラストレーターとして自立することはできそうもない。別のアプローチが必要になる。人と同じことはしないと決めている。何かアイディアはないだろうか。

最初にすべきは、セルフブランディングと広告

まず最初にすべきことは、自分の画廊を持つことだろう。自分の作品を飾る場所だ。むかしなら、画廊を持つのが王道だっただろうが、今なら、ブログとインスタグラム、Twitterを使うと思う。仕事が終わったら、自分の作品を必ず1枚作る。だれかに売るわけではなく、自分の作品をとにかく半年ほど、描き続けると思う。それをブログ、インスタグラム、Twitterで発信し続けるだろう。
1枚2000円でイラストを描いて欲しいと言う人はたくさんいると思うけど、僕が探すべきは、1枚2万円でイラストをかいてほしいというお客さんだ。自分自身で情報発信するだけでは限界がある。そこで、例えば、Twitterでフォロワーが多い人をみつけて、10人くらいに「自分がタダでイラストを描きます。」と提案してみると思う。タダでかくかわりに、イラストの中に自分のブランド名をさり気なくアピールする許可はいただく。これを、インフルエンサーの人がSNSのアイコンに使ってくれたら、無料の広告になる。
それと平行して、自分のブログを、よりアーティスティックなものに変えていくと思う。ライブペイントなどのイベントに無料でお手伝いさせてもらいながら、自分の業績を少しずつサイトにアップしていく。ブログは自分を世界の人が知ってくれるための広告だ。文章を書く人であれば、質の高い文章を書くことで、それを読む人を魅了する。イラストレーターであれば、自分のブランド価値を最大化できるようなサイトを作るべきだろう。今でこそ、スマホやノートパソコンの包装は、オシャレなものになった。でも、これを始めたのはAppleだ。それまでは、パソコンなんて、できるだけ安く買うべきもの(コモディティ)であったから、パッケージもコストを最小化することしか考えられていなかった。でも、ジョブズはパソコンそのものにこだわるのはもちろん、その商品を包む箱にも妥協しなかったのだ。箱がしょぼいと中身もしょぼい。当たり前の話だ。

ここからマネタイズする

ここまでは、お金は1円も貰っていない。むしろ、自分の労働時間を投入して、作品を作ったり、ブログを仕上げたりしているから赤字だ。しかし、種まきを終えた状態と言える。この時点で、インフルエンサーがSNSのアイコンに自分のイラストを使ってくれているわけだから、少しずつイラストの問い合わせがくるだろう。問い合わせに対して、他のイラストレーターと差別化するために、1枚2万円の強気の価格を提示する。自分にはそれだけの価値があると自分自身に言い聞かせながら。この人は、そのへんにいるイラストレーターとは、比較できない実力のある人だと思ってくれた人だけが、イラストを購入してくれるのが理想的。自分の商品に対して、高い価値を感じてくれる人はかならずいる。アーティストが価格競争に足を踏み込んだら地獄の入り口だし、それはそもそもアーティストとは呼べない。

フロントエンド商品とバックエンド商品

しかし、1枚2万円のイラストを2時間かけて作成したのでは、1時間あたり1万円というのが生産性の上限だ。1ヶ月に30枚描いたとしても、60万円。実際、年間通じて月30枚のイラスト依頼がくることはありえないから、この方法で、生活するのはどう考えても難しい。さらに言えば、イラストを描く作業というのは、外注が難しく、自分の労働時間と商品の交換になるため、収入はガラスの天井を超えることはできない。自分の労働時間を投入せずに、あるいは数時間の労働で、数百万円の価値を生み出す仕事を作り出すことが最終目標だ。
イラスト作成で稼いだお金は、自分の設備投資、人脈作りのための種銭(たねせん)と割り切るだろう。イラスト作成で収入が入り始めたら、iPadを購入してみたり、パソコンでイラスト作成できる環境を整えるだろう。自分のアウトプットを生み出す環境には、投資をケチってはいけない。自分のアウトプットをよりしやすい環境に設備投資するのだ。そして、少し遠方のイベントであったとしても、自分のブランディングに役立ちそうなもの、あるいはインフルエンサーとつながりが持てそうなイベントなら、手弁当で参加する。お金をもらって参加するのは難しくても、ボランティアでお手伝いさせてくださいといえば、比較的大きなイベントにも参加しやすいと思う。でも、必ずそこで、何らかの爪痕は残すようにしたい。
ここで、フロントエンド商品とバックエンド商品について紹介しよう。ビジネスモデルを考える際に重要なことだから。フロントエンド商品とは、顧客と自分の最初の接点となる商品だ。ブロガーなら、無料記事であったり、note.muで数百円で販売している有料記事であったりする。この商品は、自分自身を知ってもらうための入り口においておくべき商品。顧客から最もアクセスしやすい商品、自分を知ってもらうための安価な商品である。
それに対して、バックエンド商品というのは、自分の価値を最大化できる商品。フロントエンド商品を購入した人の中から、非常にコアなファンが買いたくなるような商品のことだ。今回の話で言えば、1枚2万円の商品は、フロントエンド商品としてその後も描き続けるだろう。では、自分のコアなファンのためのバックエンド商品というのは何が良いのだろうか?バックエンド商品の特徴として、めったに売れなくて良いものであり、価格は自分自身に決定権のあるもの、他の人では代替え不可能な商品である。例えば、企業に対して、商用利用可能なイラストを作るような仕事が面白いかもしれない。年間契約で200万円くらいもらえると面白い。横展開して、「成功するイベントプロデューサー」という立場で、イベントを仕切る仕事を請け負うのも面白い。イラストを描いて、イベントにたくさん参加するうちに様々な業界の人と知り合うことができるだろう。そのコネクションは、自分の中だけにある無形資産だ。それをフル活用して、成功するイベントを企画するという仕事を請け負えるかもしれない。企業のイベントを盛り上げるために、自分の知り合いのイラストレーターやミュージシャンを呼んでみたりするのも面白いだろう。このバックエンド商品の開発こそが、自分がイラストレーター(途中からイベントプロデューサーになるかも)として生活していくために重要な働き方になる。数時間の労働で、数百万円もしくはそれ以上の価値を生み出すことが目標だ。
ある程度収益が上がるようになってきたら、勤め人の仕事は、週に3日くらいにしてもらうように交渉しても良いし、それがむりなら、週3回働く職場に転職しても良いだろう。収益が上がるようになってきたら、自分の会社を設立する。そうやって、最初は、お金を稼ぐための仕事(勤め人)に収入を依存する割合が98〜100%という時間が数年間続くと思うが、途中から、イラストレーター、イベントプロデューサーという仕事の割合が、2割、5割と増えてくるだろう。そうしたら、勤め人は卒業すれば良い。

勤め人プラスαってこんなイメージ

勤め人の仕事は、自分が自立するまで、安定した給料、労働環境を提供してくれる、非常にありがたい場所だ。毎日職場に行って、必要とされる作業をすれば、自分が生活する上での最小限の給料をもらえる。これは、非常に需要なこと。でも、勤め人の仕事というのは、仕事というよりも作業に近い。自分自身がクリエーターとして自立したいのかどうか?自問自答すべきだろう。僕は、大きな意味でクリエーター、イノベーターというものに憧れている。死ぬまで勤め人として働くのが良いのか?と聞かれると、自分の場合は明確に答えはNoだ。安定した職場というのは、自分が自立するまでの、パトロンくらいに思っておくのがちょうどよい。5時まで働き、帰宅後に自分の好きな仕事をするというのは、言葉で言うほど簡単なことではない。でも、僕が考える自分の好きを仕事にするという最適解は、こういうことなのだ。