医師の違法残業や未払いに対する労基署の勧告
高松赤十字病院、医師らの残業代未払いで是正勧告
医師ら複数の職員の残業代が未払いになっているとして、高松赤十字病院(高松市番町4丁目)が、高松労働基準監督署から是正勧告を受けたことが、病院への取材でわかった。勧告は2018年3月20日付。病院は未払い額などを調べている。
病院によると、労基署が昨年12月に調査に入り、全職員約1100人のパソコンの使用記録などから勤務実態を調べた。その結果、複数の職員が自己申請していた勤務時間より長く働いていたことがわかったという。
労基署は、少なくとも昨年9月までさかのぼって未払い分を払うよう求めている。同病院の榎本典昭事務部長は「人手不足で医師の確保も難しい状況にあるが、勧告を真摯(しんし)に受け止めて対応したい」と話した。
九州内14中核病院に労基署勧告 違法残業や未払い
2013~17年度に是正勧告を受けた14病院は、新別府病院(269床、大分県別府市)から聖マリア病院(1097床、福岡県久留米市)まで規模はさまざま。勧告内容(複数回答)で最多は、労使協定(三六協定)で決めた上限を超えて労働させる違法残業で11病院。済生会福岡総合病院(福岡市)や北九州市立医療センターなどだった。複数の病院が「過労死ライン」の月80時間を超える協定を結んでおり、聖マリアでは月150時間の協定を上回っていた。
次いで、残業や深夜労働で2割5分以上の割増賃金を払わなかったとする残業代未払いが、国立病院機構嬉野医療センター(佐賀県嬉野市)など4病院。「8時間超の労働で1時間以上の休憩」「1週間に1日以上、もしくは4週間に4日以上の休日」など、休みの規定違反も4病院あった。
是正に向けた改革(複数回答)では、10病院は患者に直接影響していた。本人・家族への病状説明を原則、平日日中の診療時間内に限定したのが6病院、主治医が入れ替わる複数主治医制導入が5病院あった。聖マリアは今春から、外来診療の縮小や手術数の制限に踏み切った。済生会福岡総合は土曜外来を廃止した。
東京都立小児総合医療センターが、医師ら職員約130人の休日や深夜の勤務に十分な残業代を支払っていなかったとして、立川労働基準監督署から是正勧告を受けたことが分かった。同センターは6月までに未払い分約1億2千万円を支払った。
都によると、勧告を受けたのは2014年度と15年度の職員の残業代である。同センターは午後5時15分から翌午前8時半までの夜間や休日の勤務に原則として超過勤務分の賃金より安い宿直手当を充て、救急措置などがあった場合のみ賃金を割り増ししていた。だが、夜間や休日勤務が通常より負担が少ないとはいえないとして、労基署から超過勤務分の賃金支払いを求められ、従ったという。
藤沢市民病院
神奈川県藤沢市の藤沢市民病院で、医師と看護師、400人あまりの残業代、およそ1億3000万円が未払いだったことが分かり、藤沢市では補正予算を編成して、残業代を支払うことにしています。病院では、時間外勤務の申請は、医師や看護師が、管理職の許可を得た上で専用の書類に手書きで記入していますが、去年11月、労働基準監督署が調べたところ、電子カルテにアクセスするなど仕事をしていたと見られる時間帯と、勤務記録が合わないケースが相次いで見つかったということです。
このため病院が、過去2年間について詳しく調べたところ、421人分、あわせておよそ1億3000万円の未払いが判明したということです。
「どこまで膨らむのか…」当直医への残業代未払い、1年分だけで9億円超 沖縄県立6病院
時間外勤務の当直医師らに対する賃金未払いがあるとして、2016年11月に沖縄県立2病院が労働基準監督署から是正勧告を受けた問題で、全県立6病院の医師・歯科医師への未払い額が2016年度だけで9億円を超える見通しであることが7日、沖縄県病院事業局(伊江朝次局長)のまとめで分かった。勧告は医師だけでなく、看護師ら他の医療従事者を含めた未払い残業代の過去2年分の支給を求める内容。同局は「勧告に基づけば9億円どころでは済まない。総額がどこまで膨らむか現時点では全く見通せない」と説明する。
勧告を受けたのは北部病院と南部医療センター・こども医療センターだが、同局は全県立病院に共通した給与の取り扱いがあるとして、6病院にまずは16年度の当直医師の人数と未払い額の報告を求めていた。
その結果、対象医師は計298人に上り、報告額が最も多かったのが中部病院の約2億5千万円。南部医療センター約2億3千万円、宮古病院約1億8千万円で続き、最も少ない精和病院は約2800万円だった。近く県公務員医師労働組合との団体交渉があり、16年度人事院勧告などに基づく給与引き上げで合意すれば、さらに未払い額が増える見込みという。
上記に示したとおり、ここ5年程の間に、労働基準監督署が、かなりの数の病院の調査に乗り出しており、未払い残業代の支払いを勧告する事例がたくさんみられるようになっています。
電子カルテのログを確認することで残業は簡単に把握できる
労働基準監督署が、医師の残業状況や残業代未払いについて、調査に乗り出すと、医師の勤務状況は、電子カルテのログをたどることで、かなり正確に把握することができるようです。病院側としては、労働基準監督署に目をつけられると、電子カルテのログという圧倒的な証拠が手元に残っているため、言い逃れができない状況にあるようです。
まっとうな病院であれば、このようなニュースを目にしたとしたら、医師の残業代をきちんと把握して、正当な残業に対しては、きちんと残業代を支払う方向になりそうですね。