時間貧乏から抜け出すために

労働生産性が高まったのになぜ余暇が増えないのか?

あざらし君
あざらし君
忙しくていつも時間がたりない
博士
博士
労働生産性が高まっているのになぜ余暇は増えないのだろうか?

今後、余暇時間は増えるのか?

医師の余暇は、今後増えるのでしょうか?減るのでしょうか?この点については、勤務している病院の属性(都市or地方、医師不足の有無、患者数)によって異なるため一概にはいえません。世界的な流れて考えてみたとしても、労働時間が増えるかどうか?余暇が増えるかどうか?については意見がわかれるようです。LIFE SHIFTという本を元にして考察してみたいと思います。

労働生産性が高まると余暇は増えるはず

1930年、経済学者のジョン・メイナ ード・ケインズは「わが孫たちの経済的可能性」と題したエッセーを記し、経済が豊かになれば余暇時間が増え、そうした自由な時間をどのように使うかが人類の大きな課題になると述べた 。

ケインズの予測ははずれたと、あなたは思うかもしれない。過剰な余暇時間が人類にとって最大の問題になるとは、現在も未来も信じ難い。

100年単位で考えると人類の労働生産性は、上昇し続けており、人々の所得は増え続けていると言われています。普通に考えると生産性が向上して、賃金が上昇すれば、余暇時間は増えそうなものです。実際に労働時間は長期的な視点に立つと、減少し続けています。

多くの先進国では、産業革命を境に労働時間が大幅に増えた。1200~1600年の400年間、イギリス人の年間労働時間は1500~2000時間程度だったが、産業革命最盛期の1840年には3500時間前後まで跳ね上がった。イギリスとアメリカでは、年52週間にわたり毎週70時間働くのが当たり前だった。当然、こうした工業国では、19世紀を通して労働時間の短縮が労働運動の目標であり続けた。
労働者の抵抗により、まず土曜日が半休になったが、1週間の労働時間はまだ40時間を大きく上回っていた。週休2日と1日8時間労働が標準になったのは、20世紀前半になってからだった。アメリカでは1914年に自動車王ヘンリー・フォードが工場で週40時間労働を導入したが、労働時間の制限が法制化されたのは1938年のことだ。それに対し、ヨーロッパではもっと早く労働時間の短縮が進んだ。20世紀に入る頃にドイツが労働時間の制限を決定し、そのあと1917年にロシア、1919年にポルトガル、1936年にフランスが続いた。2015年、ドイツの週平均労働時間は35時間、フランス、イタリア、イギリスは37時間となっている。

でも、実際には、勤務医の中で、余暇が増え続けていると考える人は少なそうです。その理由として、「人は賃金が増えたら、余暇を増やしたいという考えよりも、物理的なモノを所有したがる」という傾向が強いそうです。確かに、給料が増えたら、今より良い場所に住みたくなりますし、高級車にも乗りたくなります。物理的なモノを所有したがる人ほど、その購入費用を得るために、長時間働かなくてはならなくなるのです

賃金が高い人ほど労働時間が長くなる傾向があるようです。

賃金が上昇すると、余暇の(言い換えれば、働かないことの)コストが高まる。労働時間を減らすことの代償は、減った労働時間分の所得が減ることだ。この点では、賃金が高い人ほど、労働時間を減らしたときの所得減が大きい。したがって、高所得者ほど、余暇のコストが大きく、長時間働くことを選択するのだ。

忙しい人は、実は忙しいと思われていない?

少し別の話題にうつりましょう。先日フランケンと音声コンテンツの収録を行った時に「忙しい人は、実は忙しいと思われていない?」という話題がでました。自分の勤務先に朝7時から夜10時まで待機している先生がいたとします。土日も必ず病院に来ています。看護師さんは、いつ電話をかけても、この先生は院内にいるため、気軽に指示を聞けます。救急外来にいる医師も、「○○先生はいつも院内にいてくれるから助かる」と高評価です。
でも、はたして、この○○先生は、周囲の人から、忙しい人という評価を得ているのでしょうか?客観的にみたら、病院中の誰よりも、院内に残っているはずですが、「いつ電話しても院内にいる」というのは、暇とは思われていないにしても、それほど多忙とは思われていない可能性もあります。
仕事がものすごく忙しいのに、職場の飲み会や新年会、忘年会に必ず参加して、3次会まで付き合う人がいたとします。この人も、仕事はものすごく忙しく、その上飲み会には全部出席しているので、間違いなく忙しいはずです。でも、「○○先生は、飲み会は全出席だから。終わりもエンドレスだよ」というのは、むしろいつ誘っても飲み会に必ずくる、ちょっと暇な先生という印象を持たれてしまうかもしれません。
ここでポイントとなるのは、「自分のリソースを、1ヶ所に集中させてしまい、そこで長時間労働してしまうと、周囲の人からは忙しい人という評価が得られにくくなってしまう」ということです。

生産性を高めるためには

労働時間を少なくしつつ効率よく稼ぐこと。これは労働生産性を高めることと言い換えられます。そのためには、自分の労働資源を、一カ所に投入するのでなく、分散する考えを持つべきかもしれません。職場の仕事は定時で終わらせる。残業をすることで給料をあげようとしない。定時に仕事を終わらせたあとの時間は、余暇にあててもよいし、スモールビジネスや金融資産投資、不動産投資など、収入源を増やすための種まきに使っても良いと思います。もらった給料で、地位財(贅沢品)を購入し続けると、せっかく生産性が高まって余暇が増えるはずが、労働時間を増やして収入を増やさざるを得なくなります。

お金と時間のバランスをとろう

勤務医は、働いてお金をもらうビジネスモデルのため、お金と時間が常にトレードオフの関係になります。どれくらい働いて、どの程度のお金をもらうのが効率が良いのか?出費が増えすぎると、さらにお金を稼ぐ必要がでてくるため、自分のお金が足りなくなる。自分が職場でどれくらい働くのか?家計を見直して節約をすることなどのバランスをとれるのは、自分にしかできません。この点で、自分を個人経営の事業とみたてて、経営者目線で分析することが大切になるのかもしれませんね。