(2024/10/11 16:27:26時点 楽天市場調べ-詳細)
Contents
主題1 3種類の成長ループの要(かなめ)は 錯覚資産である
人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている
錯覚資産の本を取り上げた理由
エッセンシャル思考からクリックモーメントからの流れ。クリックモーメントで複雑エネルギーとして解説されていた部分を明快に説明している。
ハロー効果 イケメン政治家がたくさんの投票を得る。イケメンという1つのプラスの属性値に引っ張られて他の属性値(仕事ができる)も底上げされてしまう現象。マイナスのハロー効果もある。
これをまず理解しろ、一つ成功すると、ハッタリが効くようになる。という理解でよい。
錯覚資産とは、「他人が自分に対して抱く、自分に都合がいい錯覚」のことだ。なぜ錯覚資産が重要なのかというと、それが、成功と失敗を分ける、極めて大きな要因だからだ。
・錯覚資産(勘違いさせる力)は、3種類の成長ループのすべての要となる
本書の前半には、脳内に無意識に生じる認知バイアスの説明と医学的な根拠が述べられている。
・ハロー効果 イケメン政治家がたくさんの投票を得る。イケメンという1つのプラスの属性値に引っ張られて他の属性値(仕事ができる)も底上げされてしまう現象。マイナスのハロー効果もある。
これをまず理解しろ、一つ成功すると、ハッタリが効くようになる。という理解でよい。
すごくライトな読み口で始まる本なので、最初はメッセージが胡散臭く感じるが、本文の1/3くらいまで来ると、ん、待てよ、何だこれは、という感じに印象が変わる。
この本の構成は大きく分けて、「これを言いたい!というメッセージ」と「なぜそう言えるか?の根拠を解説」の繰り返しからなる。
以下のバイアスの章がその例になる。
・利用可能性ヒューリスティック
脳がすぐに利用できる情報だけを使って答えをだすこと。すぐに思い浮かばない情報は、無視して判断を行ってしまう。
錯覚資産に懐疑的な人間を説得するための説明
・認知的不協和の理論
自分の中で矛盾や葛藤(認知的不協和)があるとき、無意識のうちに事実を捻じ曲げてしまい、その矛盾を解決しようとする。
(例)お金持ちになりたいけどなれない→金持ちは人を騙して金儲けをしている。
現実を変えることで認知的不協和を変えられる場合は、健全な結果になる。しかし、それが困難な場合、無意識は認識や記憶の書き換えによって矛盾を解消する。
・感情ヒューリスティック
好きなものはメリットだらけでリスクがほとんどなく、嫌いなものにはメリットはほどんどなくリスクだらけだと思い込む認知バイアス。
・認知バイアスを引き起こしやすくなる脳の性質
脳は過剰に一貫性を求める(一貫していない状態が不快)。過剰に原因を求める(雨乞いをしたから雨が降った)。過剰に結論を急ぐ。
まとめ
脳にはさまざまなバグがあり、そこで様々な勘違いが生じ続ける。それがプラスあるいはマイナスの錯覚資産を形成する。錯覚資産は、複数の成長ループのかなめになっているからそれを無視してゲームに参加することは不利になってしまう。
錯覚資産を蓄積した状態だと、2回目以降の成功確率がアップする!
実力→成果というルートを否定はしない。ただ、一部なんだ、ということ。それ以外のループがいっぱいある、そして、複利だ、と
ここまでのチャプターは、錯覚資産とそのループがあるよ、と言った。
次は、これを使うということの意味を考えて行く。
主題2 錯覚資産の特徴はその不可視性
・思考の錯覚の最大の特徴は、その不可視性だ。
基本的に意識の知らないところで、無意識が勝手に記憶を書きかえることで認知バイアスが発生する。
(例)古くからの友達がビジネスで大成功をおさめた。俺は昔からあいつのことを優秀だと思っていたと記憶が書き換えられる。
上に上げた認知バイアスの結果、直感的に正しく感じるけど間違っている事、直感的に間違ってるけどあっている事の二つが生まれる。これは見えない。この死角を使って殴り合うのが現実社会だ。見えないところから殴れ。殴られないように見えないところをガードしろ。
・錯覚資産とは、「他人が自分に対して抱く、自分に都合がいい錯覚」のことだ。なぜ錯覚資産が重要なのかというと、それが、成功と失敗を分ける、極めて大きな要因だからだ。学生時代であれば、ガリ勉して試験で良い点をとれば他人に勝てる。実力をつけて成果をだせば勝てる。でも社会人になり、組織の中で仕事をしはじめると錯覚資産の扱いがゲームの進行上非常に重要になる。
これを利用するのは、卑怯だ。でも、使わなければ世界は生きづらくなることを覚悟しろ。
使わなかったときの不利益は上に示す三種類のループの複利で増えていく。
・錯覚資産の大きさ
「ハロー効果の強さ」✕「思い浮かびやすさ」✕「思い浮かべる人の数」✕「思い浮かべる人の質(教授>同僚医師)」。この図形の体積が錯覚資産。
・錯覚資産は、多次元図形の体積として表現できる。錯覚資産は指数関数的に増大する。実力と錯覚資産は、相乗効果で増大していく。
錯覚資産はべき分布する。要は、ごく一部の人間に、大部分の錯覚資産が集中する。非常に大きな格差が生まれる。錯覚資産を理解し、増やす努力をする者としない者の差は、どんどん広がってしまう。
この集中する交点が、ハブなのだ。資産の大きさは与える影響の大きさに直結する。
現実世界は、実力が正しく評価される健全でフェアで気持ちのいい世界なんかじゃない。思考の錯覚の泥沼の中で、錯覚資産という卑怯な武器で殴り合う、油断のならないジャングルなのだ。
まとめると、
見えないところで大きな武器がものを言ってる。
複雑系に連結することで、とんでもなく大きくなる差を意識しよう。
じゃあ、次は、それを意識して、医療者が何を考えて行くか議論しよう。
主題3 錯覚資産を医師の社会でどのように利用するか?閉鎖的な組織と開かれた世界の違い
錯覚資産を何処に蓄積するべきか?
・医局のような閉鎖的な組織
一般には教授や直属の上司に対して、錯覚資産をいかにして蓄積するかがポイントになるであろう。教授や上司に気に入られることは非常に重要だ。上司が夜遅くまで職場で仕事をするタイプであれば、自分も遅くまで残るべきであろう。逆に、17時で仕事を切り上げる働き方、飲み会に参加しないスタイルは、上司に「なんだこいつ?」という印象を持たれてしまう。これが、負のハロー効果を生み、「成果をだしている?なんかずるしてるんだろう」みたいな感情ヒューリスティックを生む。
閉鎖的な組織では、いかにして、直属の上司に錯覚資産を蓄積するかがポイント。そして、★ネガティブゲームである。ただし、その組織から一歩外にでたら、その錯覚資産は使えなくなるデメリットもある。
ネガティヴゲームに応用した時、錯覚資産を最も端的にいうと、「評価をする権利のある人に気に入られろ」というものになる。
1.あいつは上司に媚を売っているだけだ!という負け惜しみが構造的に無意味であるということを理屈っぽく説明しているに過ぎない。
2.認知行動学は出世戦略に応用できるんだよ、と書いたに過ぎない。
この二つにこの本の非難は集約される。
筆者の達観しているところは、わかってんなら実践しろよ、ループが拡大すると、その「実力」も手が付けられないほど大きくなるぞ。と斜めに切って捨てる姿勢だ。
身も蓋もない言い方をすれば、
自分の信念なんかは、とりあえずしまっておいて、錯覚資産で影響力を大きくしてから信念とやらを実践すればいいよ、って話。
もしかしたら、先輩が後輩をいいように言うこと聞かせるための武器に使うテキストなのかもね。
・開かれた世界(例えば全国学会で存在感を示す)での錯覚資産
学会発表は、錯覚資産を蓄積するための良いアピールの場になる。これはリアル自分をアピールできる。この場合、錯覚資産を蓄積すべき対象は不特定多数になる。★ポジティブゲーム
開かれた世界では、エッセンシャル思考で、個人のレイヤーで小さなトゲを束ねて伸ばす。クリックモーメントをつかみ、自分と同じような大きさのトゲを持つ人間(ハブになる人物)とであい、私達というレイヤーでさらに大きなトゲをつくる。それを束ねて先鋭化。
この過程を、錯覚資産を複利運用することで、加速するのが王道になりそう。開かれた世界で錯覚資産を蓄積、複利運用するために、Twitterやブログはわりと良いツールになるかも。
ネットでのインフルエンサー的な評価の広がりは、実際のビジネスシーンで、虚像となるリスクはあるよ。取って来た仕事がガチガチの能力オンリーのビジネスってあるし。意外と外科の世界ってそうでしょう?大変に危ないこと言ってるけど。
実際に、過大評価の挙句トンデモナイ場所に放り込まれて恥かいたことのいっぱいあるし。
これって、クリックモーメントで出てきた社会規範の話と一緒なのかな。錯覚資産が使える領域とは、社会規範の緩い世界。ビックマウスががちがちの世界に来ると「化けの皮が剝がれる」メカニズムだろう。錯覚資産の限界を示唆するね。
ただし、錯覚資産は虚像かというと、必ずしもそんなことは無くて、駆け出しのころに錯覚資産に過大評価してもらっていたころと、今の自分では、いわゆる実力というものが全然違う。
錯覚資産ループに実力をつけてもらった今ならば、10年前にポンと戻されたら、偶然に頼らなくても今と似たような立ち位置に戻ってくる方法論はいくつか具体的に想定できる。要は、再現性のあるスキームにする実力が伴うってことだよね。
この違いはやはり無視できない。
主題4 フランケンのポエム説教
この本って、最初に一回流して読んだときに、どこに注目するかが読者によって分かれる本だって、先生が言った。
その通りだと思う。
僕は本を斜に構えて読んじゃうタイプなので、認知行動学の細かいロジックに注目しちゃった。錯覚資産そのものについては、まあ、身もふたもないけど、そりゃそうでしょう。という程度だったのよ。
錯覚資産そのものに注目するようになったのは、やっぱりクリックモーメントとの関係を自分なりに考えたときかな。
まず、今までの流れでエッセンシャル思考とクリックモーメントにどう関与するのか、という考察をしておきたい。ふたつの本を通して解説したものは、「成功のチャンスが訪れるのは確率的なのだ。だから、トライする回数を増やして、チャンスが来たら掛け金を大きくしろ」というものだった。そこで、クリックモーメントの回で飛ばした章のことを思い出してほしい。
「複雑エネルギー」という言葉を通して、大きな流れに駆動されてクリックモーメントでつかんだチャンスはより大きな成功に導かれる、と書かれていた。残念ながら、何をいってるのかうまく説明できていなかったが。
その一つの答えがこの本で記されているハロー効果と三種のループがもたらす増幅だ。この本では「一定だったはず」のチャンスが訪れる確率が、一つの成功をもとに増幅されるすなわち「一定ではなくなる」と説いている。
そして、この主張が事実として定着していないのは、脳の機能により正しいと思えないから、すなわち「差別化された武器になる」と説く。
この理論にはやや自己矛盾があり、認識できない、知覚できない、を前に押し出すがゆえに、なぜそれを意識して自分だけその影響を受けずに武器に転じられるかという部分の言及で若干もにゃもにゃする。しかし、クリックモーメントをつかみ大きな錯覚資産を得た後であれば、この理論が正しいこと、すなわち、自分の成功が実力だけで構成されていないことに納得がいくはずだ。
この本では、錯覚資産のもたらす増幅効果を、ループの交点として表現した。では、このようなループは三つしかないのか?複数の人間がかかわるとこの図はどう変化するのか?一つの点を中心に真っ黒い鍵束のようにまとまっていくのか?
この答えを導くには、次の本が必要になる。
この本では、実力、という要素にすべてが構成されるという天動説的なパラダイムに、錯覚資産という地面を与えて地動説へのパラダイムシフトを演出して見せた。
では、個人の錯覚資産という地面が複数集まって構成される世界とはどのような姿をしているのか?
この地面を動かして見せるのが複雑系のスモールワールド、すなわちフラクタル理論だ。
ここで再びパラダイムが大きく変わる。
この世界ではもはや何かを中心に回転するという世界観すら必要とせず、まさに個が全、の宇宙観で見事に「個人のもつ環境」を保持したまま全てとのつながりを一枚の絵に落とし込む。
複雑系をもっとも簡単に表したのが橘玲の「読まなくていい本の読書案内」だ。あっさり読める。
この本はすごいんだよ。ポストモダンとリゾームというわけのわからない話をスッキリ話きる。迫力の一冊!
そのうちラジオでやろう。
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