医師が無給で働く?というのは非常に違和感のあるフレーズだと思います。ですが、大学病院では、特別珍しいものではありません。今回は、大学病院で働く無給医の現状について説明します。
大学病院で給料をもらえるのは、医員、助教、講師、准教授、教授という役職を得ている人
もちろん、大学病院で働く医師が、全員無給というわけではありません。大学病院によって仕組みは異なりますが、一般的には以下のような雇用体系になります。
医員 パートタイム
助教(以前は助手と呼ばれていた) 正規職員
講師 正規職員
准教授(以前は助教授と呼ばれていた) 正規職員
教授 正規職員
つまり、上記の役職が無い医師が、無給で働いているのが現状です。
無給医の仕事の内容
これは、多岐に及びますが、一般的には以下のとおりです。
病棟の患者さんの管理(回診、処置、検査のオーダリングなど)
外来の手伝い(教授の外来の横に座り、カルテ入力をサポートする仕事)
当直
なぜ、医師を無給で働かせることが可能なのか?
普通に考えると、「なぜ医師を無給で働かせることが可能なのか?」という疑問が生じると思います。無給医師が成立するために重要なのは、教授の人事権です。勤務医は大きくわけて、医局に所属して教授の人事権の元で勤務先を決める(決めてもらう)医師と、医局には属さず、自分で勤務先を探す医師がいます。前者の医師は、イメージとしては、通常のサラリーマンを想像してもらうと良いです。本社から、支店に転勤を命じられるのと同じようにして、医師も教授の人事権の元で、「○月から○○病院に転勤してください。」という指示で転勤します。その人事異動の中の一部が、「大学病院で無給医として働く」という命令です。博士号取得のために大学病院で研究を行う大学院生が、無給医として働いているのも一般的です。教授に働く病院を斡旋してもらい、博士号取得の指導をしてもら代償として、一定期間大学病院で無給で働いているとも言えるでしょう。
助教、講師、准教授、教授もアルバイトで生計をたてている
助教、講師、准教授、教授もアルバイトをしていると聞くと、驚く医学生の方もおられると思います。一般に、大学病院で役職を与えられているスタッフであっても、大学病院からの給料だけで生活している医師はほとんどいません。大学病院から支給される給料は、非常に少ないからです。
そのような背景があり、助教、講師、准教授、教授は、常に大学病院にいるわけではなく、週に数回アルバイトにでかけています。そのような特殊な環境で、病棟の患者さんの管理をスムースに行うために、無給医、医員といった立場の医師が必要不可欠なのです。