今回の記事は、医学生の方向けに、勤務医の給料についてご紹介したいと思います。
公的病院においては、医師の給料は年功序列が基本
あくまで一般論ですが、公的病院においては、医師の給料は年功序列が基本です。もちろん、研修医、後期研修医の時期は安く、専門医取得後のスタッフになると給料が1000万円を超える人がほとんどでしょう。ただし、専門医取得後は、ゆるやかな年功序列になりますが、はっきり言ってそれほど年収はあがりません。むしろ、管理職になり、時間外手当がつかなくなると、年収が下がるケースも多いと思います。
頑張って働いても給料が同じっておかしくない?
実は、同じ病院に勤務している医師の中でも、毎日定時に帰宅するゆるふわ医師と、心臓血管外科などのハードな科の医師で、同期であれば基本給は全く同じです。差が出るとしたら、時間外手当だけです。その時間外手当に関しても、病院によっては、1ヶ月に○時間以上は認めないという暗黙のルールがある場合も多々あります。
ここで、みんなが疑問に感じるのが、「激務の医師とゆるふわ医師の給料が同じっておかしくない?」という疑問です。いつも医局でおしゃべりしていて、定時に帰宅する医師と、緊急手術あり、ICUで術後の全身管理も全て一人でこなす心臓血管外科医の給料が同じというのは、ちょっとありえないですね。でも、それが真実です。
もし、仮に医師の売上に応じて、年収に差をつける方法を採用したとします。いわゆる成果報酬ですね。その場合には、当然ですが、給料に見合わない仕事量の医師を解雇するという仕組みがセットで必要です。病院が医師に支払える人件費は、ある程度決まっているわけですから、全員で均等に分けるか、働く医師にたくさん渡して、働かない医師には渡さない(つまり解雇)のどちらかです。
ただ、日本ではきちんと朝病院に通勤して、定時に帰宅する人を解雇することはできません。働かない医師を解雇できないのなら、セットとして、人の何倍も働く医師にも、平均的な給料しか支払えないというのが実情なのです。
そうなると、優秀な医師はみんな辞めてしまうのではないか?と考えます。一般に専門性の高い診療、アカデミックな臨床研究というのは、やはり公的な病院でなされることがほとんどです。ですから、アカデミックポジションで活躍することを希望する優秀な先生達は、いくら薄給であっても、公的病院を辞められないというのが現実だとおもいます。アカデミックポジションに興味の無い人は、早々に公的病院を離れて、私立病院に移動してしまうか、開業するはずです。
私立病院では、前年度の売上に応じた年俸制を採用している病院もある
私立病院においては、自分の売上をアピールすることで、年俸を上げる交渉ができる病院もたくさんあります。これはメリットでもありますが、売上をあげられない(頑張った前年の売上を下回る結果)場合は、年俸が上がらない、もしくは下げられてしまう可能性があります。30代、40代前半であれば、馬車馬のように働くことも可能ですが、自分の体力のピークをこえてくると、若い頃と同じようにがむしゃらに働くのが難しくなる可能性も考えておかなければなりませんね。さらに、年収が増えると、累進課税により税率も上がってしまうため、燃費の悪い働き方になるのは否めません(サラリーマンができる節税は限られているため、容赦なく税金をむしりとられてしまいます)。