生産性を高める

やめる勇気

最初に皆さんに質問です。
「仕事ができる人」、「生産性の高い組織」について、どのようなイメージを持っていますか?

日本の労働生産性はG7で最下位

日本の労働生産性は、世界的に見ても高いとは言えません。
日本の労働生産性がG7で最下位にとどまる理由

日本の生産性は70年代からG7で最下位
日本生産性本部が、OECD加盟国35ヵ国で比較した時間当たりの労働生産性は、2016年のデータで20位である。
日本の生産性を100とすると、米国は151、ドイツが148、フランスが145、イタリアが118、イギリスが115、カナダが110となっている。これら7ヵ国を先進7ヵ国(G7)としてまとめると、日本はG7の中での生産性の順位は、データが遡及可能な1970年以降でずっと7番目(最下位)なのである。

100の仕事を任されていた部署があるとします。今年は100人でしていた仕事を、来年から50人でしないといけない。
このような環境の変化は、日本だけでなく、世界中で起こりえます。
日本の組織だと、リーダーが「1人1人が、今まで以上に仕事に責任をもって、一生懸命働いて、2倍の仕事をこなそう!気合で乗り切ろう」
と意思決定してしまいます。
そうして、現場は大混乱におちいります。
現場のアクションは以下の2通りになるでしょう。

タイプ1
定時に帰宅するため目の前の仕事を猛烈なスピードで片付けようとする人

タイプ2
仕事が終わらなくて、残業、休日出勤をする人

でも、この2通りの働き方では、どちらも生産性は高くなりません。
残業したら、生産性が低くなるのはイメージしやすいですね。
でも、「定時に仕事を終らせるために、2倍のスピードで仕事を片付けたら、生産性は上がるのでは?」と考える人がいるかもしれません。
結論を先にお話すると、この方法をやっても生産性はあがりません。

生産性についていえば、職場の人数が50人になった時点で
タイプ1の人 生産性100→100(不変)
タイプ2の人 生産性100→70(低下)
組織全体としては、生産性は低下
となります。

リーダーがすべきは、やるべき仕事の見極め

先程の例で、まず最初の過ちは、リーダーの決断です。
リーダーが最初にすべきは、「本質的な価値を生み出さない、無駄な50の仕事をやめる」という意思決定です。
組織の人数が減るというのは、実は生産性を高める大きなチャンスです。
無駄な仕事を切り捨てて、生産性の高い仕事にフォーカスして、その仕事を半分の人数で行えたら、組織の生産性は2倍になります。

当然ですが、切り捨てた50の仕事に対して、クレームが入ることもあるでしょう。
顧客から、「今まで無償で○○してくれていたのに、なんでそのサービスを中止したんですか?」といったクレームもあるでしょう。

でも、それは、「顧客により良いサービスを提供するために、不要と判断したのでやめました」ですむことです。

ここで、スティーブ・ジョブズのお話を紹介しましょう。
ジョブズが、Appleにカムバックした際、アップルには解決すべき課題が山積みでした。そこで、ジョブズは、ミーティングの中で、「我々が解決すべき課題を10個リストアップしよう」と提案しました。20以上の意見がでましたが、些細なことは切り捨てて、最終的に10個のリストが完成しました。
そこでジョブズはこう言いました。
我々にできることは、最上位の3つまでだ

リーダーが最初にすべきことは、本質的な価値につながる仕事を見極めること。そこに組織のリソースを集中させること。そのために、本質的な価値に結びつかない仕事を思い切ってやめるという意思決定をすることなのです。
事なかれ主義が徹底されている日本の組織においては、「切り捨てた50の仕事に対するクレーム」を恐れるあまり、ジョブズのような思い切った決断ができません。リーダーの本質的な仕事というのは、そのような意思決定をすることですが、それを評価する仕組みがないため、リスクをとるリーダーが育ちません。無駄な仕事を思い切ってやめるという意思決定をする人がいないため、無駄な仕事がどんどん増え続けてしまいます。

個人が活躍できる時代

最初に述べたとおり、1970年代から日本全体の生産性があがらない理由の一つとして、「組織が、本質的な仕事を見極めて、無駄な仕事をやめる決断ができない」という構造的な問題を上げてみました。でも、これは、日本の組織の生産性が低いだけであり、「日本人の生産性が低い」わけではありません。

クリエーターの世界では、組織を離れて、成功した自営業者が、大きな組織から仕事を請けおう時代に突入しています。この流れは、アメリカでは日本に先行しており、フリーランスの時代と呼ばれるようになりました。
自営業者(フリーランス)が、自分の小さな会社が生き残るために、本当に価値のある仕事にフォーカスして、生産性の高い仕事をし続けてていることが大きな理由だと思います。

サラリーマンとして安定した給料をもらいながら、自分のすきま時間にスモールビジネスをして、そこで自分の価値が極大化するような働き方をする。
勤め人プラスαという働き方に大きなチャンスが訪れる気がしています。