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伽藍とバザール
橘玲さんは、働き方と組織の関係について、「伽藍(がらん)」と「バザール(市場)」に区別しています。
伽藍というのは、壁で取り囲まれた寺院などの建造物のことを意味します。
わかりやすい例えでいえば
・官僚組織は、伽藍&ネガティブゲーム
・サッカー選手は、バザール&ポジティブゲーム
ネガティブゲーム
官僚組織で働く場合を考えてみましょう。医師の場合で言えば、古い体質を維持した医局制度(白い巨塔のような組織)をイメージするのがわかりやすいです。
組織内部での評価は、加点方式ではなく減点方式(ネガティブゲーム)です。
原則1 組織の人員構成がピラミッド構造をしている
日本は、年功序列の組織がほとんどなので、若手の人材がピラミッドの底辺に位置しており、人数も多く、ピラミッドの頂点に近づくにつれて人数が減り、高齢化します。
原則2 コモディティとしての働き方を求められる
ネガティブゲームの重要なルールは、「個性を発揮する必要はなく、減点をしないこと」です。それぞれの組織で上司から割り振られた仕事を、期日内に完成させることを要求されます。要求されたクオリティー以上の仕事をするのは自由ですが、それで加点されることはありません。社員全員が、要求された仕事を毎日忠実に行うことが求められます。わかりやすい例えをすると、充電式の乾電池のような働き方が理想です。充電式の乾電池のようにサイズや電圧・電流が均一(組織内で配置換えしても同じように働けること)で、故障しないこと(大きなチャレンジをして失敗する、不祥事を起こすと退場)。1日が終わる頃には、クタクタになって帰宅するけれども、自宅で休養をとり、翌日は元気いっぱい(フル充電)で出社してくれることが理想です。会社というサッカーチームの中では、一人の選手がフォワードからディフェンダー、ゴールキーパーまで全てのポジションで、同じ質の仕事をすることになります。サッカー選手のメッシに対して、「来年ゴールキーパーがいなくなるから、君、来年からゴールキーパーやってね」といわれるのが日本の一般的な会社組織です。
電圧、電流にムラがある電池(好きなことには200点の力を発揮するけど興味ないことには0点の人)
形がいびつな電池(職場にスーツを着てこない、髪型が個性的、鼻ピアスなど)
は敬遠されます。
そして、残念ながら、この乾電池の規格は、グローバル・スタンダードではなく、その会社の内部に最適化された規格なので、バザールで評価されることはありません。
組織から一歩でたら、長年在籍した組織で身につけた仕事の仕方、人脈、社内で稟議の通し方やネゴシエーションは、別の組織ではほとんど役に立ちませんし、評価もされません。
そのような組織から求められる人物像を忖度して、若者たちは同じような髪型、スーツを着用します。
そして、コモディティのつらいところは、交換がきく汎用性のある働き方になるため、市場における労働価値はどうしても、低く見積もられてしまいがちです。
医師について言えば、健診のアルバイト価格が、都心部でどんどん下落している現象をみれば理解しやすいですね。
原則3 退場したら復帰できない
一度組織から退場させられたら、二度と同じ組織には戻って来れません。
それは、組織が年功序列で形成されているため、主要なポストは限られているためです。主要ポストは、ピラミッドの下層から地道に階段を登ってきた、会社に忠実な人にのみ用意されているのです。
ネガティブゲーム(伽藍)での働き方のまとめ
組織の内部で求められる働き方は、会社の中で、乾電池のように活躍することです。個性を発揮したり、会社の外で人脈を築き上げる必要はありません。減点されないように細心の注意を払う必要があります。なぜなら、その組織から退場させられてしまうと、特に40歳をすぎてしまうと、働く場所がなくなってしまうからです。
ポジティブゲーム
サッカー選手を例にとって考えてみましょう。キーワードは、バザール&ポジティブゲームです。
原則1 組織の人員構成はフラットな構造をしている
サッカーチームの選手は、様々な国籍、年齢の人で構成されます。
一部の選手は、同じチームでキャリアを積むことがありますが、一般には様々なチームに移籍しながら、キャリアアップを狙います。
組織内部でボトムアップで出世するわけではありませんから、チームに所属する選手の関係はフラットな関係になります。その年にたまたま同じチームでサッカーをしていたけど、来年はまた別のメンバー構成のチームになります。
原則2 コモディティとは対極の働き方を求められる
ポジティブゲームの重要なルールは、「減点を恐れずにチャレンジすること。自分の持つ個性を最大化するような働き方」です。足が速い選手であれば、フォワードとして、その個性を監督にアピールするでしょうし、フィジカルコンタクトの強い選手であれば、ディフェンダーとしてチームに貢献するでしょう。官僚的な組織に求められるような、「どの部署に配置されても、際立った特徴がなく、60点のプレーができる選手」には居場所がありません。いままでチームにいなかった、規格外の選手というのは、サッカー選手にとっては最大の褒め言葉です。
組織内の評価も、加点方式になります。得点を量産する選手であれば、ディフェンスが多少できなくても許されるでしょう。メッシに対して、攻撃は60点でいいから、ディフェンスをもっと頑張れとという監督はいません。
原則3 異なるチームに移動することが前提
年功序列の組織で、出世する戦略は通用せず、毎年チームを移動することが前提となります。その組織で求められるポジションがなければ、チームを離れて、別のチームに移籍します。足の早い選手は、同じチームに何人も必要ありませんから、むしろそのチームを離れて、足の早い選手を求めるチームに移籍したほうが、活躍の機会を与えられるはずです。
まとめ
ポジティブゲームとネガティブゲームでは、支配するルールが全く異なります。どちらが良いか?という問題ではなく、ルールの違うゲームを戦っているということは理解しておいた方がよいでしょう。