医学生のうちに

医師の労働環境。QOLが高い診療科と低い診療科

今回の記事は医学生に向けた記事になります。一般化された記事なので、働く病院の性質、同じ診療科に所属する医師の数に依存するので、参考程度に読んでみてください。


QOLが低い診療科

医師の仕事において、QOLが下がりやすい項目をピックアップしてみました。

医師の本来の仕事とはかけ離れた雑用の多い職場(大学病院)
救急対応の必要な夜勤業務を行った翌日に休みをとれない職場
緊急の呼び出しが多い診療科
長時間手術と術後のICU管理が必要な診療科

医師の本来の仕事ではない雑用の多い病院

医師の本来の仕事とはかけ離れた雑用の多い職場(大学病院)について。民間病院では、普通医師が行わない採血、点滴のルート確保、尿道留置カテーテルの挿入といった手技を、看護師ではなく、医師が行わなければならないというローカルルールで運用されている大学病院があります。大学病院では、無給医と呼ばれる医師の存在も問題視されるようになりました。大学院生などが、大学病院から報酬を貰わずに、採血、点滴のルート確保、尿道留置カテーテルの挿入といった手技をさせられているケースです。研修医の時期であれば、習得するメリットがありますが、それを1年中させられたのではたまったものではありませんね。他にも、入院サマリーの作成、診断書作成などにおいて、私立病院ではメディカルクラークのサポートが多いのですが、公立病院ではクラークのサポートがほんとどなく、医師が全ての書類を書かされている病院もたくさんあります。

夜勤業務を行った翌日に休みをとれない病院

医師は入院患者さんの急変時の対応のために、病院に泊まる業務(宿直業務)があります。これは、急変時以外は呼ばれることがないため、それほど体力を消耗しません。夜も急変がなければ、起こされることはありません。しかし、日本の多くの急性期病院においては、夜間救急車を断らずに受け入れ続けて、その救急対応にあたる医師の業務を夜勤業務ではなく、宿直業務として扱い、翌日も普通に働かせています。同じ救急外来にいる看護師は、夜勤として扱われ、翌朝から休みのなります(勤務も17:00〜翌朝までの勤務)。しかし、医師の場合は、例えば月曜日の朝8時から17時まで通常の業務を行い、17時から翌朝まで救急対応の夜勤を行い(内科系の夜勤はほとんど寝られません)、よく朝8時から、17時まで普通に働かされます。33〜36時間の連続労働を行うというのは異常な環境です。しかも医師の場合、通常のデスクワークとは異なり、人の生死に関わる判断をするため精神的な疲労が非常に大きいのです。具体的な診療科としては、脳梗塞を扱う脳神経外科、神経内科、骨折を扱う整形外科、心筋梗塞を扱う循環器内科、カテーテル治療(IVR)を専門にする放射線科、動脈解離を扱う心臓血管外科、虫垂炎やイレウスを扱う腹部外科、出産をあつかう婦人科などが救急の呼び出しが多い診療科と言えるでしょう。

緊急の呼び出しが多い診療科

救急外来から、365日呼び出される診療科もキツイと思います。夜間、休日に脳梗塞の患者さんが運び込まれると、最近ではカテーテルで血栓除去を行う治療が主流になりつつあります。これは、タイムディフェンディングな治療になるため、5分でも10分でも早く病院に駆けつける必要があります。しかし、通常の日常業務を行い、21時頃に家に到着したと同時に、脳梗塞の患者さんが救急に搬入されたら、病院にすぐに駆けつけなければなりません。そのような生活を続けることは、非常に大きなストレスとなるでしょう。


長時間手術と術後のICU管理が必要な診療科

心臓血管外科や脳神経外科を専門にしていると、長時間の手術と、術後のICU管理が必須になります。少ない人数でこれらの専門領域をカバーしていると、ほとんど病院から帰れない医師も多くいます。

QOLが高い診療科

あくまで一般論ですが、眼科、皮膚科、耳鼻科、泌尿器科、精神科、読影が専門の放射線科、病理医などはQOLが高いと言えそうです。もちろん、大学病院に所属していると、学会活動などで忙しいこともありますし、病院に1名しか医師がいないケースだとそれなりに忙しくなることはあると思います。