空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか?(日記)

サラリーマンとサラリーマン医師の違いとは?

フランケン
フランケン
今日も記事を書いたぞ
博士
博士
いつもご苦労さまです

スキルを持ち出せないサラリーマン

一般企業に労働者として就職すると、企業内での役割は乾電池だ。乾電池は既定の電力を供給してくれれば何も考える必要がない。企業も労働者が考えて自主性を発揮するこを求めていない。ゲームでいえば、スロットマシンのレバー引き係みたいなものだ。経験値も糞もない。一生やっても何も変わらない。いやいや、そんなことないでしょう、スキルを伸ばして昇進して、なんて考えは一切意味がない。一般企業に勤めている限り、昇進に合わせて別のスロットマシンに移るだけで、得られたスキルなんてスロット機種依存の転用不能なものばかりだ。単独で動作するようなビジネスユニットを持ち逃げすることなんてできないだろう。テレビゲームで言えば、ゲーム内のレベルが上がったところで、そのスキルをゲームの外に持ち出せない状態である。給料はゲームをやった時間の長さに対して支払われるため、ゲーム内でのスキルアップは収入に反映されない。こんな面白くないゲームをよくもまあ一生続ける気になるものだと感心するが、世の中のサラリーマンというのは大なり小なりこういう世界で生きている。
医者の世界も同じような構造をしており、ほとんどの医者が乾電池として一生働く。一般企業と違って、モンスターを倒したときにドロップする金額が大きいので、つまらない人生の割にはお金がたまる。だからそこそこ満足、という生き方がサラリーマンとしての医師の生き方だ。こう書くと「やっぱりつまらないな」と思うかもしれないが、一般企業のサラリーマンに比べるとパラダイスだ。彼らが「仕事つまんねーな、かといって頑張りたくないけど。あー、せめて何もしないで給料だけ3倍にならないかなー」と思ったとして、本当に3倍になってしまったのがサラリーマン医師の人生だ。一般企業で乾電池をやるはずだった高校生がたまたま医学部に行った結果、医者になって小遣いの多い乾電池をやってると思ってくれればいい。

医師に貯まる経験値とは?

テレビゲームに例えたとき、一般企業における乾電池労働では実世界での経験値が貯まらないと書いたが、医師の場合は実世界で「ある種のパラメータ」が経験値として貯まっていく。医師がキャリア形成を考えるとき、このパラメータが意味しているものが何かということに注目していく必要がある。
こういう書き方をすると医師としてのスキルそのもの、つまりは治療行為に関係するパラメータのことを連想するかもしれないが、これは残念ながらゲーム内でのレベル上げに相当する。経験によってレベルの高い医療をできるようになったとする。そうすると、高難易度(高収益)の治療をするユニットに配置されるだけで、乾電池としてこき使われることに大きな変わりはない。この構造はどこまでも続き、例えば国公立病院であれば最終的に「院長」と書かれたソケットにあてがわれるだけで、企業家としての位置づけは一生変わらない。企業家として医師をとらえるとき、注目すべきパラメータとは「医療行為からビジネスモデルを切り取る能力」といえる。この能力に関連するビジネスの仕組みを隠しきれていないという意味において、医療業界は一般企業と異なっている。

ビジネスモデルを体感しやすいポジションにいる医師の特殊性

医業・病院とは労働集約型産業である。そして、医業本来のビジネスモデルは保険医療である。前者は医業を成り立たせるのは医師やコメディカルスタッフという労働資本であり、工場や特殊機械ではないという意味だ。これはサービスが成立する過程を「誰が何をしているか」という簡単な構造に分解して理解しやすいということだ。後者はカネの流れにテクニックが存在せず、「保険請求というルールだけが医療におけるマネタイズの方法論だ」という構造が理解しやすいということでもある。
なにを当たり前なことをと思うかもしれないが、乾電池がこのビジネスフレームを理解できてしまうというのは経営者にとっては極めて重大な問題である。乾電池自身が電力供給しているユニットの構造を理解し、単独可動して、収益化できる単位で切り取ることができてしまうと、企業は自身の持つサービスの価値を守ることができなくなる。だから一般企業におけるビジネスモデルは、ウォークスルーできないように巧妙に隠されている。先に述べた様に、医業のような労働集約型産業はクローズにできるものが無く丸裸だ。
これは乾電池であるべき医者がビジネスモデルを丸パクリできてしまうという意味かというと、言いたい事とはちょっと違う。そんなものは個人開業の形でやりたい医者はみんなやっている。開業コンサルにカネだけ渡せば明日から院長だ。ただし、その場合は「自分の病院の院長」という一風変わった乾電池になるだけだが。注目すべきパラメータとは「医療行為からビジネスモデルを切り取る能力」と前述した。これは、医療行為がぶら下げているお金の流れを理解し、診療報酬以外の方法でサービスをマネタイズできるかどうか判断する能力だ。