マイホーム

マイホームを購入すると分散投資ができなくなる

橘玲さんの臆病者のための株入門という書籍からの引用です。

1500万円の金融資産を持つひとが、頭金1000万円で5000万円の家を買うと、5500万円の総資産を保有することになる(金融資産500万円+不動産5000万円 )。この場合、金融資産の割合は 9%だが、その大半は偶発的な出費に備えて流動性の高い預貯金で保有しておくのがふつうだ。そうなると、自由に運用できる資産は100万円かせいぜい200万円で、資産全体に占める割合は2〜3%に過ぎない。

家計のポートフォリオについて

ポートフォリオとは、現金、預金、株式、債券、不動産など、投資家が保有している金融商品の組み合わせの内容のことです。もう少し詳しく説明すると、投資家はリスク管理のために、自らの資産を複数の金融商品として分散することがあります。このリスク管理については、よく「卵」と「かご」の話に例えられます。卵を1つのかごに入れてしまうと、そのかごが落ちたときにすべての卵が割れてしまいますが、1つずつ違うかごに入れておけば、たとえ1つのかごを落としてしまっても、ほかの卵は安全です。このように、資産家もみずからの資産をさまざまな種類の金融商品に分けて投資することで、リスクヘッジを図っているのです。
この投資を分散させること、またはその分散の組み合わせのことを、金融・投資分野ではポートフォリオと呼んでいます。このポートフォリオを見れば、投資家がどのような金融商品をどれだけ保有しているかがわかるだけではなく、保有資産の分散の仕方からリスクに対してどのようなヘッジ(分散による備え)をしているのかが見て取れます。
特定の金融商品だけに偏った資産配分をすると、予測外の大きな市場変動があった場合、資産のほとんどを失ってしまうリスクがあります。それを避けるため、「さまざまな金融商品にバランス良く資産を配分しておいたほうがいい」というのがポートフォリオの考え方であり、最もリターンが大きくリスクが小さい最適な組み合わせを探る「ポートフォリオ理論」が研究されているのです。

資産運用の基本は、リスクの分散

上記のとおり、個人レベルで考えると、資産運用の基本は、自らの資産を複数の金融商品に分散投資することです。日本の人口動態を確認すればわかりますが、今後日本の人口は急激に減少していきます。未来を正確に予想することは困難ですが、人口動態に関しては、戦争のようなイベントがおこらない限り、かなり正確に予想することが可能です。人口が減少する世界で、不動産価格が右肩上がりになるというのは、かなり楽観的な観測になります。
本来、個人レベルで、資産の一部を不動産投資にまわしたいのであれば、REITをポートフォリオに取り入れるのが合理的です。REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略で、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。

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しかし、マイホームを購入してしまうと、冒頭の橘玲さんの書籍にかかれているとおり、ポートフォリオのほとんど全てが、マイホームという不動産で占められる状態になります。不動産投資家でもない、素人の医師が、初めて購入するマイホームという不動産が、自分の人生の資産運用のポートフォリオのほとんど全てを占めてしまうというのは、あまりにリスクを一点集中しすぎです。マイホーム購入は、れっきとした不動産投資であり、個人レベルでいうと、マイホームを購入した時点で、ポートフォリオのほとんど全てが、自分がその時の気分で購入した不動産で埋め尽くされてしまい、その後変更ができないということは、十分に理解しておくべきでしょう。