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医師の”現状と未来”の労働環境を理解する
結論からいうと、今後医師の労働環境は悪化する。その根拠をいくつか上げておこう。
医師は準公務員。日本の社会保障制度と心中する
自由診療を除き、多くの勤務医、開業医は国の認可した保険医療機関で、保険診療を行って収益を上げたり、給料をもらっています。つまり、自由診療を除くと、実質的には準公務員と考えるのが妥当でしょう。現在の医学部医学科人気をみれば容易に理解できますが、「これまで医師は準公務員という立場から、非常に大きな恩恵を受けていた」ことは明らかでしょう。大きな参入障壁に守られた準公務員という立場と高額所得の組み合わせですから、ある意味当然の結果といえます。
これまで、勝ち組であった医師の生活も、今後は厳しくなることは間違いありません。その大きな理由が、少子高齢化に伴う日本の社会保障費増加と、それに対する抑制圧力です。日本の社会保障費は増加の一途をたどっています。それに加えて、少子化のため労働人口が減少することが運命づけられており、今後社会保障費に抑制圧力が加わることは間違いありません。勤務医の給料が徐々に下がることは容易に想像できますし、今は儲かっている開業医であっても、国が水道の蛇口を締め、診療報酬点数下げてしまえば、収益が減少することから逃れることはできません。
地方都市はブラックな病院で埋め尽くされる宿命
病院の収益が減りつづける時代。病院の経営者は、なんとか黒字化を達成せねばなりません。そうなると、医師を今までと同じ給料で長時間働かせるというのが経営者として合理的な判断になります。救急対応を必要とする当直を夜勤扱いにせず安い給料で医師を働かせること、大学病院の無給医問題なども根本の構造は同じです。
特に生産人口の減少と高齢化率の増加が著しい地方都市から、ブラックな病院が増え始めることは、宿命といえるのです。
医師過剰時代に備えよ
実は、意外かもしれませんが、医師の絶対数、人口10万人当たりの医師数ともにかなりのスピードで増加しています。注目すべきは過去30年以上、一貫して増加し続けているという事実です。
地方都市における問題点は、上述したとおり、ブラックな病院で埋め尽くされることです。ですが、都会に住む医師の問題点は、医師過剰による問題だと思います。医師は地方都市での勤務を避け、大都市に集中する傾向が今後ますます強まります。その傾向を察知して、官僚は新専門医制度を作り、医師をむりやり地方都市に移動させようとしましたが、このような政策がうまくいくはずがありません。
そうなると、増加し続ける医師は、大都市に集中してしまう。つまり、大都市においては、医師過剰時代に突入する宿命にあるのです。今後、大都市では自由診療という大海原に船を出す医師が増えるはずです。
医師の定額使い放題問題
診療報酬に抑制圧力が加わるため、病院経営者は病院経営を黒字化するために医師の長時間労働を黙認し続けます。ブラック企業と同じロジックで、ブラック化した病院は、必ず医師の定額使い放題を巧妙に使って、病院の売上を確保します。
医師の夜勤業務は、業務と認めず寝当直と同じ安い報酬で働かせる。しかし、日常業務が長時間労働となり、残業代未払いになると法律は医師の味方になってしまいます。すでに、公的な病院においては、医師の勤務時間を正確に把握して、正当な残業に対しては、報酬を支払うよう病院に対して、指導が入るようになりました。せめて、長時間労働に対して、正当な残業代は支払ってほしいと感じていた医師にとっては、追い風でしたが、新しい悪魔のツールが開発されてしまいました。それは、医師の定額使い放題を、誰にも気づかれずに促進できるツールでもあります。キーワードは、リモートワーク(在宅残業)による医師へのフリーアクセスです。
医師を残業させずに、定時に帰宅させます。定時に帰宅させることで残業代を支払う必要はなくなります。でも当然仕事は終わっていません。終わっていない仕事は、在宅でリモートワークで行っていただいてかまいません。そのために必要なノートパソコンは病院が支給します。自宅から病院の電子カルテにアクセス可能。ご自宅で思う存分お仕事を続けてください。というロジックです。リモートワークに対して、病院は基本的に残業代を出しません。なぜなら、これは医者に働きやすい労働環境を提供することが目的ではなく、病院が医師を定額使い放題するための悪魔のツールだからです。こうして、土日だろうが、出張中だろうが、医師はリモートワークという仕組みにより、24時間、365日、病院に頭脳と体を捕捉されてしまうのです。
医師の第3のキャリア。それは医師を副業にすること
今回提案する働き方は、35歳以降の医師に対する一つの提案です。これまで医師の労働環境について、ネガティブな情報を提示しました。ですが、現時点で医師の最大のメリットは、常勤であれ、アルバイトであれ、安定した高額所得が得られることです。これは、非常に大きなアドバンテージです。ですが、上述したとおり、この大きなアドバンテージが、今後20年存続するとは思えません。
そうであれば、医師としての収入以外に、スモールビジネスから収入を得る方法を真剣に考えるべきだと思います。医師のアルバイト収入は、スモールビジネスには含まれません。なぜならアルバイトは基本的には残業をしてお金を稼ぐことを効率化しただけで、問題の根本的な解決にはつながらないからです。スモールビジネスの肝は、自分の労働時間を切り売りする生活(常勤医、アルバイト医)を抜け出し、自分の所有するビジネスモデルから収益をあげることです。
スモールビジネスの最大の恩恵は合同会社によりもたらされる
公的病院の勤務医と専業主婦という組み合わせは、経済的な自由を目指すなら、最悪な組み合わせです。その理由を説明してみましょう。日本は累進課税ですから、一家の大黒柱である勤務医1人が働き続けると税負担も増加してしまいます。
夫婦共働きに移行することは、今後もちろん検討しなければなりませんが、自分の他に家族に働き手を増やす方法があります。この新しい働き手が、すなわちマイクロカンパニー(合同会社)です。合同会社の仕事が、スモールビジネスです。
今後は、一家に一法人(合同会社)というのが、間違いなくトレンドになると思います。経済合理的に考えると非常にメリットの大きな仕組みだからです。
合同会社のメリット1 所得の分散
勤務医として、自分のリソースを医師の仕事(常勤、アルバイト)に100%注ぐと、上述したとおり、累進課税というシステムで潰されます。今後高額納税者に対してはさらなる増税の方向になるはずですから、非常に燃費の悪い働き方になるでしょう。
そうであれば、自分のリソースの一部をスモールビジネスにわりあて、その収入を合同会社で管理するようにすれば、自分の所得が分散されます。所得を分散させることで、累進課税の仕組みから抜け出すのが目標です。
合同会社のメリット2 節税が可能になる
スモールビジネスを所有し、そこから収入が得られるようになれば、合同会社という仕組みをつかって様々な節税が可能になります。スモールビジネスに関連した出張費や会食は経費になりますし、ほかにも様々なスキームが存在します。
このように、勤務医、サラリーマンというルールの枠外で働くことのできる自分の分身が合同会社なのです。
合同会社に自分のアルバイト先の収入を入れるのはご法度
ここで、スモールビジネスを作らなくても、アルバイト先の収入を合同会社の口座に振り込んで貰ったらいいんじゃね?と考える人がでてきます。これは、医師が最初に考える方法で、一見合理的にみえるのですが、判例で否決されてしまいました。やはり、アルバイトで稼ぐのではなく、スモールビジネスで勝負するしかなさそうです。
スモールビジネスの所有について。労働者と資本家の違い
もう少し大きな仕組みで考えると、勤務医は労働者であり、資本家ではありません。結論からいうと、労働者が経済的な自由に達するのはかなりの無理ゲーです。資本家には、労働者には使えない、お金と時間にリバレッジ(てこ)をきかせる方法と節税のスキームが使えるため、資産形成にかなりのアドバンテージが存在します。
医師を副業にするという考え方は、労働者(医師)として安定した収入を得ながら、合同会社でスモールビジネスを行うという資産家のメリットも利用する方法です。勤務医と資産家のハイブリッド戦略ともいえるでしょう。
まとめ
従来の勤務医として働き続けていく方法では、今後労働環境が悪化していくことが予想され、ゲームの難易度がハードになります。なんとかハードゲームを続けたとしても、日本は定年退職というシステムがあり、65歳で職場から強制退場させられてしまい、市場に放り出されてしまいます。人生100年時代に突入しており、65歳で市場に放り出された時に、労働力を提供する以外に収入を得る手段を確保しておかなければ、生活を続けることが困難になります。
そうであれば、30代、40代になったら、自分のリソースを勤め人に一点集中させずに、1割でも2割でも良いので、スモールビジネスを所有する方向に舵を切るのが合理的だと考えます。医師の第一ステージ(専門医取得まで)は、医師として働くためのスキルを磨く、専門医を取得して、医師としてのスキルが一通り身についたら、所得の分散と節税が可能な合同会社を設立して、スモールビジネスを開始するのです。
スモールビジネスを立ち上げても、最初は労働力や種銭の持ち出しで、収益はほとんどえられません。でも、お金と時間を投資して、わずかながら収益を得るというサイクルを2回、3回とまわし続けるうちに、コツがつかめてきます。そうすれば、時間とお金のリバレッジを効かせて、スモールビジネスを一気に拡大させることが可能になります。そうやって、自分の労働力に依存する割合を100%から、少しずつ下げていき、60歳になったころには、自分の労働力(医師の仕事)に依存する割合を2割位にして、残りの8割をスモールビジネスで稼げるようになれば理想的ですね。
これこそが、医師を副業にするという医師の第三のキャリアなのです。
今回提案した医師の第三のキャリアについては、私自身が管理者を務めている、医師のキャリア革命というオンラインサロンで、日々研究をすすめています。資産形成、収益不動産の作り方、新しい医師の働き方について、100名を超える医師(勤務医、開業医)で活動を続けています。かなり個性的な医師が集まっており、日々新しいアイディアが生まれています。興味がある人はぜひご参加くださいませ。医師、歯科医師、研修医の方の参加も可能です。
オンラインサロン:医師のキャリア革命